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倉井眉介の本棚

  1. 怪物の木こり

怪物の木こり  宝島社 
 主人公の二宮彰は弁護士でありながら、人を殺すことに何の罪悪感も抱かないサイコパスで、これまでも何人もの人を殺害している。そんな二宮の前に、ある日、怪物マスクをかぶり、斧を持った男が現れ、二宮に襲い掛かる。男が投げた斧が頭に当たり大怪我を負うが、致命傷を免れた二宮は、男を探し出し、殺そうと決意する。このときに頭に受けた傷を調べるための検査で二宮は自分の脳に人間の感情や記憶を操作する「脳チップ」が埋め込まれていたことを知るが、二宮には手術の記憶はなかった。一方、世間では頭を斧で割って殺害し、脳を持ち去るという事件が連続して起こり、やがて被害者らが捨て子で養護施設で育っているという共通点があることがわかる・・・。
 第17回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作です。主人公が頭脳明晰なサイコパスという設定で、更にその主人公を怪物マスクをかぶった男が襲うという事件の始まりに、これはひょっとしてトンデモ本かなあと覚悟して読み始めました。ところが、ストーリーの展開が早く、グロテスクな事件ながら犯行の描写自体はそれほどグロテスクではないので、読み易く、あっという間に読了です。二宮は弁護士という設定ですが、だから頭脳明晰というわけでしょうが、直接はストーリーには関係ありませんね。
 物語は二宮が同じサイコパスの医師である杉谷(同級生に同じサイコパスがいるというのも安易な設定です)とともに怪物マスクの男を探すパートと女性刑事・戸城嵐子を主人公に連続殺人事件を追う警察の捜査のパートが交互に描かれていきます。この構成に、ミステリにはよくあるトリックが仕掛けられているのですが、これは途中で気づく人が多いかもしれません。
 頭を殴られたことにより、脳に埋め込まれた脳チップが不具合となり、人間としての他人への共感が生じ、生きる意味をも考えることとなった二宮が、果たして怪物マスクの男との戦いに勝利することができるのか、そして怪物マスクの男との関係を知った後も彼を殺すことができるのか。落としどころはあそこだったのでしょうか。 
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