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小谷野敦の本棚

  1. ウルトラマンがいた時代
  2. このミステリーがひどい!

ウルトラマンがいた時代 ベスト新書
 題名に惹かれて購入した本ですが、巷ではすごいことになっているようです。
内容にあまりに誤りが多い、それが少し調べれば誤りとわかるようなものが多いということで、これはもう単純に著者ときちんと校正しなかった出版社が悪いのですが、それ以上に誤りを指摘したことに対し、著者の態度が悪いという話の方が大きくなってしまっているようです。もうこれは感情のすれ違いですからどうにもなりません。
 内容の話をすれば、僕としては同年代の著者が、ウルトラマンのいた時代をどう生きてきたのかということに興味があって読んだのですが、正直のところ内容というより前にまずは文章が読みにくいです。書いてあることが、あっちに飛びこっちに飛びで、まとまりがないのも一つの原因かもしれません。順に頭に浮かんだままをズラズラと書いていったという印象がします。
 内容的には、懐かしいなあとの想いを持って読むことはできたのですが(特に「ウルトラマンA」で、突然月に帰ってしまった南隊員を演じた星光子さんのことが書かれていたのは、子ども心に星さんに恋していた僕としては嬉しかった。)、それほど当時の世情を書き込んだ内容となってはいなかったのは、ちょっと期待はずれでした。
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このミステリーがひどい!  飛鳥新社 
 評論家であり作家でもある小谷野敦さんが古今東西のミステリー小説からテレビのミステリー番組までを鋭く批判します。相変わらず物議を醸す人ですね。題名からして「このミス」をおちょくった題名なのは明らか。ネタバレを宣言していますので、対象作品を読んでいない人は覚悟してこの作品を読む必要があります。
 歯に衣着せず舌鋒鋭く古今東西のミステリーの名作といわれる作品を「おもしろくない!」と切り捨てています。更には、おもしろくない、つまらないと斬り捨て、返す刀でこんな作品を読む人はうんぬんと読者も斬り捨てています。言いたい放題ですよねえ。でも、小説のとらえ方、感じ方というのは人によって違うものです。この本は小谷野さんという個人の考えだとして割り切って読めば腹を立てることもありません。そう考える人もいるのかと思って読むのが一番です。まあ、鋭い舌鋒の中には、なるほどなと思う批判もありますし。
 小谷野さんは、作家の知り合いというのはほとんどいないと言っていますが、これだけはっきり個人を名指しして厳しい批判をしているので、そんな人と仲良くなりたいと思う作家は少ないでしょう。
 東野圭吾、宮部みゆきら最近のベストセラー作家を始め、ほとんどのミステリー作家を批判する中で、北村薫さんはお気に入りのようで、北村さんの最新作「太宰治の辞書」は、ページを割いて丁寧に説明しています。
 また、ミステリーを批判するだけでは飽き足らず、SFについても批判しています。あのハインラインの「夏への扉」など、猫好きの人にしか受けない小説ではないかとまでこき下ろしています。ただ、その中では「エロス」「ツィス」を著した広瀬正さんだけは評価しているのは、広瀬ファンとしては嬉しいですね。また赤川次郎さん原作の大林監督作品「ふたり」は好きだというのもこれまた嬉しいです。
 最後に小谷野さんのベストミステリーが載っていますが、その中では筒井康隆さんの「ロ−トレック荘事件」は僕もオススメの1冊です。 
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