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小峰元の本棚

  1. アルキメデスは手を汚さない

アルキメデスは手を汚さない 講談社文庫
 1973年、第19回江戸川乱歩賞を受賞した作品で、僕が江戸川乱歩賞受賞作を初めて買った記念すべき作品でもあります。今回講談社文庫で再刊されました。
 女子高校生が妊娠中絶手術の予後が悪くて死亡。女子高校生の父親が娘を妊娠させた男を捜す中でクラスメートの男子が毒の入った弁当を食べて入院するという事件が起きる。さらに入院した男子の姉の不倫相手が失踪するという事件も起きて学校内は騒然とする。
 うぶな高校生の時に読んで、同年代の高校生でも自分たちとは全然違うなあと、ある意味衝撃的だったことを記憶しています。当時田舎の学校で学ぶ僕たちにとって、女子高校生が妊娠なんて考えられませんでしたから。しかし、同年代を主人公にした青春推理という設定は大いに惹かれるものがあり、この後の作者の著作を端から読んだものでした。
 当時は主人公の高校生たちと同年代だったのに、あれから30年以上が過ぎ、今では高校生たちの行動が理解できなかった警察官と同じ年代になってしまいました。“大人になんかわからないさ”とうそぶいていた立場が逆転。最近の子どもたちの考えることはわからないと思うこの頃です。性体験の低年齢化、少年による犯罪の増加という状況の中で、現代の高校生が、この本を読んでどんな感想を持つのか興味深いところですね。
 今回ハードカバー時の和田誠さんの表紙の絵が女子高校生のセーラー服姿の写真に変更になったことは、あのイラストが印象深かっただけに残念です。
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