7編が収録された怪談噺集です。
ようやく図書館の予約が回ってきたと思ったら、もう季節は秋。やはり怪談噺は暑い真夏が旬ですね。季節外れに読むと残念ながらあまり怖くありません。というより、そもそも7編ともストレートに怖い話ではありません。恐怖譚ではなく、不思議な話といった方がいいかもしれません。
その中では冒頭の「岬へ」と「幸福の家」は、怪談噺にはよくあるパターンの設定で、ラストで世界が逆転し、じわ〜と怖さを感じさせる作品となっています。「座敷」は、田舎の旧家での幽霊話です。こういう家なら死人も幽霊として出ざるを得ないでしょうね。。「カーディガン」は、よくある仲間の中に知らない人がいつの間にか混ざっているというパターンの話かと思ったら、予想外の展開です。結果のわからないこの話が意外に読後一番心に残りました。
そのほか、森の中に独り住む老女に起きる怪異現象を描く「同居人」、不思議な蕎麦屋に行って以来死んだ妻が現れるようになる「ぬばたまの」、人には見えない男が見える「還る」が収録されています。 |