第二次世界大戦末期、敗戦の色濃くなってきた中で、主人公たち中学生は親元を離れ、塹壕堀に駆り出される。時折アメリカの戦闘機による機銃掃射が行われる中、同じように動員された女学生とのわずかな時間でのふれあいに喜びを見出す主人公たち。一方ひたすら学んだことを信じ、それを体現しようとする成瀬と主人公たちとの対立。そうした中、中学生たちの指導軍曹が姿を隠す。果たして、脱走したのか、それとも・・・
ミステリの要素はあまり濃くない。それより、どうして彼はそういうことをしたのかに主眼が置かれている。当時、国民に対しては天皇至上主義の教育がなされ、天皇陛下のためなら自分の命を捨てるという考えを持つことが当然であった。しかし、実際はどうだったのだろうか。
ひたすら軍国少年として「聖戦」の中を生きてきた者にとっては、日本兵が行ったかもしれないことを事実として受け入れることは、今まで生きてきた自分を否定することになってしまうのかもしれない。あまりに悲しい、辛い結末である。 |