2014年版の「このミス」で国内編第4位になった作品です。
複数の人間が夢で見るルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の世界で起きる殺人事件と、現実世界での死がリンクするというとんでもない展開の話です。
“白兎”、“三月兎”、“帽子屋”、“公爵夫人”など「アリス」に登場するキャラクターが出てくるので、「アリス」を読んでいるとより楽しめるかもしれません(そういう僕は、覚えているのは懐中時計を持った兎と帽子屋くらい。「不思議の国のアリス」は幼い頃読んだつもりでいたのですが、実際はきちんと読んでいないんですよね。)。
大学院生の栗栖川亜理は最近「不思議の国のアリス」の世界の夢を見るようになる。ある夜、ハンプティ・ダンプティが塀から落ちて死ぬ夢を見ると、現実世界で玉子というあだ名のポスドクが校舎から落ちて死ぬという事件が起きる。亜理は同じ世界の夢を見ているという大学院生の井森から、現実世界と「不思議の国」の世界がリンクしていることを知らされる。その後も次々と「不思議の国」の世界では殺人事件が起こり、アリスが容疑者とされる。容疑者とされたアリスはどうなるのか、現実世界での主人公・亜理は現実世界での「不思議の国」の登場人物とリンクする人物を探してアリスの無実を証明しようと奔走する。
「不思議の国のアリス」には堂々巡りの不毛な会話、ナンセンスな会話があるように、この作品でも不毛な会話のオンパレードですが、これが意外と嫌にならずに読み進むことができました。いったい、「不思議の国」の登場人物が現実世界ではいったい誰なのか、あちらこちらに伏線が張られていたのですが、このあたり、ものの見事に作者のミスリードにやられたなあという感じです。そのうえ、ラストでは世界が反転を見せるという思わぬ展開となり、大いに楽しむことができました。
割と残虐な描写も多く、特に最後に犯人を処刑するシーンはスプラッター映画の―場面のようです。 |