名探偵明智小五郎と怪人二十面相シリーズといえば、名探偵ホームズ、怪盗ルパンと並んで、小学校時代図書館で借りて夢中で読んだ本です。昼休みや放課後になると、本好きの同級生と先を争って図書館に走っていき、端から読む競争をしたものでした。図書館に置いてあって本は、江戸川乱歩の原作そのままではなく、子ども向きに書き換えられていたのですが、それでもホームズやルパンシリーズとは異なって、どこかおどろおどろしい雰囲気が漂っていて、なんだか子どもが読んではいけない本をこっそり見ているという感じでした(もちろん、内容は違いましたけど)。
そんな思い出のある作品ですが、この本は、北村想さんが江戸川乱歩の書いた作品の設定を借りて、怪人二十面相の誕生とその後の明智との闘いを怪人二十面相の側から描いたものです。今度の正月にこの作品を原作とした映画が公開されるのに合わせて文庫化されたようです。
乱歩作品と異なって主人公は怪人二十面相(と、その弟子である少年)です。そのためもあってか、乱歩作品では明智小五郎は“善”、怪人二十面相は“悪”とされていますが、こちらでは明智は非常に計算高い嫌な男に、一方怪人二十面相は泥棒ではあるけれど情が深い魅力的な男に描かれています。ワクワクしながらページを繰っていた小学生時代を思い出しながら、楽しく読むことができる1作です。 |