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北川恵海の本棚

  1. ちょっと今から仕事やめてくる

ちょっと今から仕事やめてくる  ☆  メディアワークス文庫 
  就職活動で希望の企業の面接に落ちまくり、ようやく内定をもらえた中堅の印刷会社に就職した青山隆だったが、会社説明会の時に聞いた会社の様子とは違って、毎日遅くまで残業が続くうえに休日出勤もあり、更には部長のパワハラという状況の中、入社から半年が過ぎて精神的にも肉体的にも限界を迎えていた。そんなある日、残業帰りの駅でふらっと電車に飛び込みそうになった隆の身体を強引に引っ張った男は、隆に「久しぶりやな」と声をかけ、小学校のときの同級生のヤマモトだと名乗る。その日以降、ヤマモトとのつき合いが始まるが・・・
 大手広告会社の女性社員が仕事に疲れて自殺した事件があって以来、働き過ぎや会社でのパワハラが大きな問題になっています。毎日遅くまでのサービス残業、休日も出勤して仕事、更には仕事中には上司からのパワハラに晒されるのでは、身体はもちろん、心が休む暇がありません。
 隆も「月曜日の朝は、死にたくなる」から始まって、「火曜日の朝は、何も考えたくない」「水曜日の朝は、一番しんどい」「木曜日の朝は、少し楽になる」「金曜日の朝は、少し嬉しい」「土曜日の朝は、一番幸せ」「日曜日の朝は、少し幸せ。でも、明日を思うと一転、憂鬱。」という、一週間の歌を作りますが、まさしくそんな感じなんでしょう。そういえば、振り返ると僕自身も若い頃はそんなときもあった気がします。
 仕事に参っている子どもに対し、親が「大丈夫、あなたならできるから頑張って」と励ましたことに、子どもが自殺した後で後悔したことが描かれますが、やっぱり自分自身も親として子どもに対し、「せっかく希望した会社に入ったのだからもう少し頑張ったら。ここで辞めてもこれ以上の会社には入れないよ。」と言ってしまいそうです。気をつけなくては。
 物語は、ヤマモトと出会った隆が、彼とのつき合いの中でやがて変わっていく様子を描いていくのですが、ヤマモトはいったい何者だというファンタジックな展開もあって、いっき読みです。ちょっと予想外の展開でした。
 5月下旬に工藤阿須加さんと福士蒼汰さんの主演で映画が公開される予定です。
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