第6回ホラーサスペンス大賞・大賞受賞作です。
深町たち8人の高校生は、殺された同級生の葛西を甦らせるために中国に伝わる死者復活の儀式“キタイ”を行います。しかし、葛西は甦らず、彼らはいろいろな幻影を見るようになります。
帯に書かれた8人の高校生が友人を甦らせようとするストーリーに惹かれて購入したのですが、やはりホラーサスペンス大賞を受賞する作品だけあって青春群像ものとはまったく異なる作品でした。
死者の甦りということからは、選考委員の綾辻さんも選評の中で言っているように「ペット・セマタリー」を思い出してしまったし、トラウマを負った幼い頃の友人たちが大人になってから邪悪なものに立ち向かうという流れは確かにスティーブン・キングの「IT」が頭をよぎりました。そういう点では、決して目新しいものを書いているとは言えませんが、不思議とストーリーに引き込まれて一気に読み終わりました。
なぜ“キタイ”を行ったときでなく、18年後に高校生の姿のままで甦ったのか、そもそも甦るということの意味は何か、などの謎解きの部分もあり、それが物語に引き込まれる要因になったのでしょう。
ただ、読んでいるといろいろとおかしいと思う点が多々あります。特に彼らが果たして自分を犠牲にしてまで葛西を甦らせようとする心境になるのか、ましてや葛西に負い目を感じる必要のない洋子やオカキが“キタイ”に参加する必然性があるのか、この点についてはちょっと説得力がないように思います。また、彼らが見る幻影がそれぞれ異なるのはなぜか等々突っ込みどころはあります。最後に謎解きがなされますが、いまひとつすっきりとしたものではなかった点は残念です。それから、ホラーだからやむをえないのでしょうが、スプラッター映画のような場面は勘弁ですね。 |