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川上健一の本棚

  1. 翼はいつまでも

翼はいつまでも 集英社文庫
 これはもう本当にノスタルジー溢れる作品です。物語の背景は、ビートルズが登場し始めた頃ということですから1960年代でしょうか。引っ込み思案の一人の少年が、ビートルズの歌に触発されて、しだいに成長していく姿が描かれます。
 病気で亡くなった母親への思い、再婚しようとする父親への反発、力で押さえつけようとする教師への反感、性への興味、そして友情といったものに悩む主人公が描かれます。大人になる手前の時期でいろいろな出来事に揺れ動く気持ちというのは、誰もが経験することでしょう。僕自身にしても、そういえば純な気持ちで、大人の言うことに反発したこともあったなあと(そして、もちろん性への興味なんて主人公以上だったかもしれません(^^; )、当時を振り返って主人公に共感してしまいます。
 文庫本のあとがきで、角田光代さんは、二度と中学生には戻りたくないというようなことを言っていますが、僕としては、もう一度戻ってみたいです。楽しいことがいっぱいあり、なんていっても初恋があったときですからね。たぶん、本当は嫌なことはいっぱいあっただろうと思います。ただ、時の経過が、嫌な思い出はどこか記憶の片隅にしまってしまい、楽しかったことだけを思い出させるのでしょうね。
 作者の川上健一さんは、僕の住む県に居住しており(夏は涼しい高原の町に)、ちょっと気になる作家さんです。
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