第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞のデビュー作。
高校時代、主人公とその仲間の5人は、科学部で打ち上げ可能な小型ロケットの製作に明け暮れていた。現在では、新聞記者、商社マン、宇宙開発事業団職員等とそれぞれの道を歩んでいたが、ある事件がきっかけで再び集まり、自分たちでロケットの打ち上げをすることになる。
子供のときの夢を捨てずに、それを抱えて大人になった男たちの話。ロケット打ち上げなどという、今の日本の技術をもってしても、時に失敗してしまうようなことを、単に高校の科学部だった同級生5人が実現しようとする夢のような話である。誰もが少年の頃は心の中にそれぞれの夢を抱えているが、それが大きくなるに従い現実と直面していくうちに心の奥底へと落ち込み、次第に忘れ去られるようになる。夢を忘れずにいられる主人公たちがうらやましい。
実際問題として、ロケット打ち上げなんてできっこないと思いながらも、本当に打ち上げられるのかもしれないと読者に思わせる著者の力量に脱帽。 |