主人公野村聡は、県庁のエリート職員。今年から始まった民間企業への派遣研修に選ばれて意気軒昂に派遣先に出向きます。彼が派遣されたのは県庁所在地から遠く離れた町のスーパーです。
公務員といえば前例踏襲、融通が利かない、コスト意識がないというあんまり芳しからぬ印象があり、民間と比較するとすべてが民間が上と考える風潮がありますが、作者の桂さんはそんな単純な図式にはしていません。このスーパー、接客マニュアルもないし、従業員もやる気がなくて、正職員も勤務中にもかかわらず、いつの間にか姿を隠していたり、コストを抑えるために、総菜の材料は売れ残りの食材、それも賞味期限が切れているものを使うという有様で、決して素晴らしいというような店ではありません。
そんななか、彼は役所の論理を振りかざして改革をしようとするのですが、今までの机の上で行ってきた仕事と全然違う仕事に戸惑いを覚え、しだいに店員からも浮いてしまいます。本人はエリート意識いっぱいで、自分の考えが間違っているなんて露ほども思わないのですから、うまくいかないのは当たり前です。それにしても、昔ならともかく、昨今の公務員への住民の批判の目が厳しいときに今でもこんな前近代的な思考の県庁職員がいるのでしょうかねえ。いるとすれば、その県の住民はかわいそうとしか言いようがありません。
スーパーでの彼の教育役はパートの中年女性二宮。パートのおばさんに指導されることが最初彼には気にくわなかったのですが、彼女に導かれてしだいに彼の頭は公務員然とした思考から変わっていきます。
最後はちょっとありふれた結末、予定調和的です。そうそう1年という短い期間の中で人間が変わるかなとも思ってしまいます。が、こうした爽快感溢れたラストは大好きです。
来春映画化され、なんと織田裕二が主人公を演じるそうです。う~ん・・・織田裕二だとあまりに爽やかすぎる印象が強いので、ラストで変わった主人公にはぴったりだと思うのですが、エリート意識が強い主人公を演じきることができるのか楽しみではあります。 |