第10回創元推理短編賞を受賞した「インディゴの夜」を含む4編からなる短編集です。
健康実用書のゴーストライターをしている高原晶が、大手出版社の編集者・塩谷に漏らした「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という思いつきの一言から二人で始めたホストクラブ「インディゴ」。このホストクラブ「インディゴ」を巡って起きる事件に晶や塩谷、そしてホストたちがストリートを駆け抜けます。
この作品の魅力といったら、何といっても個性豊かな登場人物たちでしょう。まずは何と言ってもオーナーの片割れ高原晶です。その気っぷの良さには、僕自身もつい惹かれてしまいます。こういう気の強い女性好きなんですよね。そして、彼女をからかいながらも裏で支える塩谷、さらには年齢不詳、本名さえ知らない謎の人物であるマネージャーの憂夜をはじめ、アフロ頭のジョン太、キックボクサーでハーフのアレックス、犬というより小猿というルックスの犬マン、DJの経験も興味も皆無だというDJ本気等のふざけた源氏名のホストたち。とにかく個性豊かというより強烈な彼等が仲間のために事件解決に向けて突っ走ります。そうそう忘れてはいけません。この人もいました。彼等が飲みに行く中華ダイニングバーの経営者、ニューハーフのなぎさママです。彼女(?)の思わぬ特技には脱帽です。
池袋のストリートを描くのは石田衣良ですが、渋谷のストリートを描くのは加藤実秋となれるのか、今後のシリーズ化を期待したい作品です。最後まで明かされなかった憂夜の正体も知りたいし、ぜひお願いしたいですね。 |