2004年最初の読了本です。99年の日本推理作家協会賞を受賞したほか、99年版「このミス」で第6位にランクインしています。
弁護士の栖本は不倫関係にありながら5年前突然自分の前から姿を消した瞭子と偶然再会します。用事があると言われ、その場は別れた二人でしたが、翌日警察から瞭子が殺害されたことを知らされます。痴情のもつれということに疑問を感じて瞭子の周辺を調べる栖本でしたが、やがて、瞭子は戸籍上の本当の瞭子ではなかったのではないかと感じ始めます。
「幻の女」といえば、有名なコーネル・ウールリッチの作品があります。自分の無実を証明するため、一緒にいた女を捜そうとするという話ですが、この作品は、殺された自分の愛する人は本当は誰だったのかを探っていこうとする男の話です。
(ネタばれ注意)
事件の根底にあるのは、政治家、業界、やくざの癒着というハードボイルド作品にはよくあるパターンですが、これが真実と思えばまた新たな真実が浮かび上がってくるという具合で物語がかなり錯綜していて、結局700頁という厚さでしたが、飽きずに読むことができました。なぜ瞭子が別人になって生きなければならなかったのかという理由は悲しいものがありましたが、かつて愛していた人を思って、警察が痴情のもつれによる殺人ですましたものを、あそこまで調べ直す意欲がわくのでしょうか。 |