第18回山本周五郎賞を受賞した作品です。
主人公村上真介は、リストラ請負会社に勤める30男。リストラを計画する会社からの依頼によって首切り対象者の面接を行うのが仕事です。こんな会社実際にあるんでしょうかねえ。とはいえ、景気が回復しない現在、自分の手を汚したくない会社に代わって、リストラ対象者を労働基準法に反しないよう自己退職に追い込んでいく(!)ことを請けおうことをビジネスと考える人もいるでしょうね。
昨今、リストラはサラリーマンであれば誰もが身近に感じてしまいます。他人事ではありません。特に僕らのように40を過ぎれば再就職先など限られてきますし、というよりもないと言った方がいい状況ですしね。「これを機会に、外の世界でもう一度チャンスを探してはみませんか」と言われても、登場人物たちがそれぞれ、どうにか抵抗したいと思うのも無理からぬことです。
最初書店の平台に並んでいたときは、「君たちに明日はない」と冷たく言い切っている題名に引いてしまって、手にも取らなかったのですが、今回山本賞を受賞したので、改めて読んでみました。
5編からなる連作短編集です。1編1編はそれぞれのリストラ対象者についての話ですが、それとともに全体を通して真介の恋愛が描かれます。物語は、真介の視点と、真介の面接を受けるリストラ対象者の視点で交互に語られていきます。リストラというと悲壮感漂いますが、語りは軽いタッチです。読んでみてわかったのは、題名は「君たちに明日はない」ですが、そこに描かれているのは明日への希望です。リストラ対象者が、真介の面接を受け退職を勧誘されながらも、それぞれの選ぶ道を希望を持って歩んでいこうとします。読んでいる僕らにも勇気を与えてくれます。おすすめの本です。
仕事中もそうでないときも、隙なく決める真介が、女性たちからは田舎者と見透かされるところが愉快です。 |