久しぶりに読んだ海外ミステリ作品です。題名からしてダ・ヴィンチに関わる謎の話かと思いましたが、単にそれだけでなく、キリスト教世界を根底から揺るがす題材をもとにした壮大なミステリでした。
変な前置きもなく事件が最初から起こり、読者を一気に物語の中に引きずり込んで飽きさせません。また、訳も素晴らしく、非常に読みやすい文章です。海外ものはどうしてもカタカナの人名を覚えるのが苦手で、いつもは「この人誰だったっけ?」と前のページに戻って確認したりするのですが、この作品ではそんなことがありませんでした。
各巻の最初にダ・ヴィンチの絵が掲げられていましたが、彼の絵にいろいろな謎の解明の手がかりとなるものが隠されているなんて、作者はよく考えたものです。事実だと思えてしまうほどですね。非常に楽しむことができました。できれば実際にこの目で見てみたいですね。
この作品のように歴史的事実を題材にする作品はどうしても作者がその蘊蓄を語りたいのか、歴史等について多くのページを割いて説明するので、読んでいてダレてしまうのですが、この作品ではそんなこともありませんでした。もちろん、暗号を解読するに当たって主人公たちはダ・ヴィンチの絵等の様々な知識を駆使するのですが、それらの知識のない僕にも難解に感じさせないのですから、ダン・ブラウンの力はすごいと言わざるを得ません。
ミステリ的要素としても“聖杯”というインディー・ジョーンズ2で、インディー・ジョーンズも探し求めた“キリストが磔刑になったときに、キリストの血を受けた杯”の行方の謎を中心に、主人公の敵“導師“とは誰なのかという謎等で最後まで読者を引っ張りましたね。お見事です。
物語に描かれる謎は僕のような宗教に興味のないものはともかく、キリスト教信者であればかなりセンセーショナルな内容でしたが、映画化に当たって一部のキリスト教団体からは抗議の声が上がったそうです。映画は5月からトム・ハンクス主演で公開されますが、この原作のおもしろさなら大いに期待できますね。 |