第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。来年2月の映画公開に合わせての文庫化です。
現在テレビで医者を主人公にした「医龍2」が放映されており、視聴率が高い中(我が家でも家族揃って見ています。)タイミングいい医療サスペンスの出版ですね。
心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の外科チーム“チーム・バチスタ”の手術で原因不明の術死が連続する。病院長から内部調査を依頼されたのは、愚痴外来と渾名される不定愁訴外来の講師、田口。医療過誤か殺人か、田口による調査が始まる。
上下2巻に分けられた文庫の上巻は、田口の聞き取り調査の様子が医療サスペンスという雰囲気で描かれていきます。ところが、下巻に入ってある人物の登場から一瞬これはバカミスになってしまうのかという危惧が生じます。あの奥田英朗さん描くトンデモ精神科医、伊良部に負けるとも劣らないキャラクターの厚生労働省技官(技官という職名の伊良部と同じ医者です)の白鳥です。人を人とも思わぬ歯に衣着せぬ発言で、相手を怒らせ殴られながらも調査を進めていきます。いつの間にかホームズ役であったはずの田口が、白鳥の登場によってワトソンへ役と格下げ(?)されてしまいましたね。正直のところ、白鳥が駆使するアクティブ・フェーズ調査とパッシブ・フェーズ調査の違いについては理解しがたく、その点ちょっとついていけないなあと思ったのですが、それ以上に白鳥の強烈な個性に最後まで引っ張っていかれました。ただ、あのキャラクターからは、最後の手紙は余分ではなかったですかねえ。
現役のお医者さんが描いた作品ですので、医療部分にはリアリティがあるのでしょうが、逆に素人にはわかりにくいところもなきにしもあらずです。医者に縁のない僕としては、状況を頭に思い描くことができませんでした。医療の素人には今回の謎解きは無理ですよね。
とはいえ、それらを補ってあまりあるおもしろさでした。おすすめです。 |