ノワールをまとう女 | 講談社 |
第65回江戸川乱歩賞受賞作です。 主人公、西澤奈美の仕事は元総会屋である原田の下で、企業から依頼されたトラブル処理をすること。今回の仕事は、日本有数の医薬品メーカー美国堂が傘下に入れた韓国企業の元社長が以前反日発言をした映像がネットに流れたことから、美国堂を糾弾するデモが起こっている事態を鎮静化させること。奈美はデモを指揮する「美国堂を糺す会」のリーダー、エルチェに近づくが、彼から同志だとして紹介された女性・ナミを見て驚く。彼女は同じ児童養護施設で子ども時代一緒に過ごし、二年前に再会してから恋人関係にある姫野雪江だった・・・。 物語は、請け負った企業の炎上を鎮静化する仕事をする中で、個人的な繋がりのあったレストランの女主人の自殺や恋人・雪江との関係がそれに絡んでくるストーリーになっています。選定委員の貫井徳郎さんの選評にもあったように、意外性やどんでん返しというものはありません。かなりの読者が途中でラストのある人物との対峙を予想できるのではないでしょうか。 映画でいえば一番の見せどころの株主総会でのシーンがあんな展開になるとは、それも奈美の周到な仕掛けが実は前々からあったとは、ここはやられましたねえ。 西澤奈美について、題名に“ノワールをまとう”とあるように通常はノワール=黒づくめの服装で、更に、筋力トレーニングを欠かさず腹筋が薄く6つに割れていて、煙草も酒も飲むということで、こういう役柄としてはステレオタイプと選評にもありましたが、これはイメージ通りで個性がないということでしょうか。しかし、女性を探偵役にしたハードボイルドとしては致し方ないところです。強い印象がなくてはねえ。個人的にはこういうキャラは好きです。今後、彼女がどうなっていくのか興味があります。続編に期待です。 |
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