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一條次郎の本棚

  1. レプリカたちの夜

レプリカたちの夜 新潮社 
 第2回新潮ミステリー大賞受賞作です。帯に大きく書かれた選考委員の伊坂幸太郎さんの絶賛の声に惹かれて読み始めました。
 ミステリー大賞受賞作ですが、これをミステリーと呼んでいいのかどうか。ミステリーというよりファンタジー、あるいは不可思議な雰囲気の作品といった方がいいかもしれません。既存の作品であれば「となり町戦争]の三崎亜記さんの一連の作品に似た感じです。
 多くの動物が絶滅した世界を舞台に動物のレプリカを制作する工場で働く往本が奇妙な出来事に遭遇する話です。発端は往本が工場内で動くシロクマを見たことから始まります。果たして中に人間が入ったレプリカなのか、それとも本物のシロクマなのか。往本は工場長からシロクマの正体を探るよう命令されるが・・・。
 自我の話とかが繰り広げられて、哲学的な難しい話かと思えば意外にサクサクと読むことができます。何を言わんとしているかは理解できませんけど。それと登場人物もまともな思考をするのは往本ばかりで、他は往本の言うことにいちいち馬鹿にした感じで話す“うみみず”、禿げでハンサムな外観ではないのに女性の恋人が大勢いる“粒山”、粒山にDVを受けていると言いながら急に豹変する粒山の妻“ナシエ”、自分はシベリア軍が作った人工生命体だという“シーニーニー”など変な人ばかりなので、物語が理解不能なものになることに拍車がかかります。
 シロクマではファンタジーですが、ドッペルゲンガーが登場してくるに至っては、もうSFあるいはホラーです。
 さてさて、いったいこの物語はどこに着地するのだろう、どう解決を見せてくれるのだろうと期待と一抹の不安を抱えながら読み進んでいったのですが、結局もやもやしたままで終了。いったい、この世界の住人は何者なのか・・・。すっきりしません。 
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