2011年「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した作品。主人公は30代の女性漫画家・和淳美。彼女には自殺を図り、意識不明のままの弟がいるが、定期的に最新技術の「SCインターフェース」という技術により、意思の疎通を行っている。ところが次第に何が現実で何がSCインターフェースの世界なのかがわからなくなる状況が淳美の周りに起こり出す・・・。
今見ているものが現実なのか、仮想現実なのかがわからなくなるというパターンは、よくある話です(例えば岡島二人さんの「クラインの壺」などがそうでしょうか。)。まさしく、作品中でも言っている「胡蝶の夢」ですね。
殺人事件が起きるわけではありません。ミステリーと言うよりSF色が強い作品です。幼い頃の海での淳美と弟の遭難騒ぎ、好きになれなかった祖父のこと、連載打ち切りとなってしまった仕事のこと、SCインターフェースの世界での弟との話のことなどを描きながら、淳美が現実と仮想現実との混乱を招いた原因は何なのかが、ミステリータッチで明らかにされていきます。
読者も、どれが現実なのかと考えながら飽きずに読むことができます。ただ、多くの読者は、この物語の全体像に途中で気付いてしまうのではないでしょうか。ラストについても、この設定なら終わり方はこれだろうなと予想できてしまいました。 |