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乾くるみの本棚

  1. イニシエーション・ラブ
  2. リピート
  3. 蒼林堂古書店へようこそ
  4. セカンド・ラブ

イニシエーション・ラブ 原書房
 初めて読んだ乾作品です。原書房から出ている津原泰水の「ルピナス探偵団の当惑」を探しているときに、同じミステリーリーグというシリーズ名が目について手に取ったのですが、表紙を開いて目次を見ると80年代の歌の題名が章名となっていたので、懐かしい感じがして思わず購入してしまいました。
 ミステリ作品のはずなのに、読み進んでいっても事件らしきものが起きません。大学4年生まで女性と交際したことがない僕(たっくん)と代打出場の合コンの席で出会ったマユとの単なる恋物語ではないか、これミステリではなかったのかなあ、あれれ!もう終わってしまうよ、と思ったら最後にありましたよ。「最後に明かされる真相」というやつが。読んでいるうちに、あれ?これって何か変だなという違和感はあったのですが、ようやく、本の帯にあった惹句がどういうことかわかりました。「ぜひ、2度読まれることをお勧めします。」「2度目にはまったく違った物語が見えてくる」・・・
 僕らに○○を信じられなくさせる作品です。
 それにしても、最後まで読み進めるのは骨が折りました。途中で、「なんだ!恋愛物語か」と何度読むのを止めようとしたことか。
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リピート 文藝春秋
 突然かかってきた地震が起きるという予告の電話。予告どおりに地震が起き、その後電話をかけてきた者から過去に行かないかと誘われる。同じように誘われ集まった9人の男女、彼らは過去に戻ることに成功するが、次々と不可解な死を遂げ始める。
 時間遡行ということではSFですが、彼らがなにゆえに次々と殺されていくのか、内容はミステリです。
 時間遡行後に行き着く10ヶ月前の世界、作品中でいうR9とかR10というのはパラレルワールドなのでしょうか。時間遡行をした後に、その世界では彼らの存在はどうなるのでしょうか。消えてなくなるのでしょうか。こうしたタイムパラドックスをいろいろ考えながら、最後まで一気に読むことができました。何故にリピーターたちは死んでいくのか。最後に明かされる事実は衝撃的です。僕としては、評判のいい前作の「イニシエーション・ラブ」よりも、こちらの方がおもしろかったです。

 今の記憶を持ったままで過去に戻ることができたら、果たして僕はどうするだろうか。ただ、10ヶ月前の過去というのがあまりに中途半端です。その間でやることとなれば、やはり登場人物たちのように競馬で稼ぐことくらいかなあと思ってしまいます。逆に遙か昔の学生時代に戻ることができれば、もう一度なりたかった職業に就くことができる可能性はありますが、今の記憶が低下した頭では勉強がついていけないだろうなあと不安にもなります。予知能力者といわれて新興宗教の教祖にでもなる野望がなければ、ギャンブルで金を儲けて、金持ちになるのが一番かなあ。
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蒼林堂古書店へようこそ 徳間文庫
 かつて中央官庁で10年以上働いたエリート公務員であった林雅賀が、副業としてミステリ関係のライター仕事をしていたのが庁内で問題となったことをきっかけに職を辞し、地元に帰って開いた古書店"蒼林堂"。そこでは100円以上の売買をした客には奥の喫茶コーナーで1杯の珈琲がふるまわれる。
 この作品は、蒼林堂の喫茶コーナーに集う常連が"日常の謎"系の謎解きをしたり、ミステリ談議に花を咲かせる連作短編集です。正直のところ、ミステリとしてはどれもインパクトのある謎解きとはいえません。それより、ミステリ好きの常連さんたちのミステリ好きならではの話の方が楽しめるといっていいでしょう。ラストは、連作ですからねえ。途中でほのめかされていたとおり、当然こういうことになるだろうなあという着地点で終わります。
 各話には、店主の林雅賀のミステリ案内として、本編の中に登場するミステリ小説について林雅賀が解説するというページも付属していて、ミステリ好きが楽しめるような趣向となっています。

※本を読みながらコーヒーを飲むなんて、至福の時間が過ごせそうですが、やっぱり常連さんには気後れしてしまうでしょうね。
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セカンド・ラブ 文藝春秋
 帯に「『イニシエーション・ラブ』の衝撃、ふたたび」とあるように、「イニシエーション・ラブ」系の恋愛ミステリー
第2弾です。
 実は「イニシエーション・ラブ」は読んでいるのですが、内容はもうすっかり忘れてしまっていました。でも、続編ではないので、忘れていてもまったく関係ありません。
 物語は、良家の令嬢と恋人同士になった主人公が、ある日恋人そっくりなパブに勤める女性と出会い惹かれていく様子を描いていきます。ミステリーと謳っていて、双子が登場しますので、当然、双子ということからの入れ替わりとかのトリックがあるだろうなと、気をつけながら読んでいったのですが、いつの間にか、ものの見事に乾さんにミスリードされていました。それ以上のトリックを仕掛けていたとは・・・。ラストで、そうだったのかぁとの驚いて前に戻って読み返してしまいました。何となく感じた違和感はこれが理由だったのですね。ただ、突っ込みどころは色々とあり、僕自身の評価はプラスマイナス0というところでしょうか。
 女性経験のない男で、周りが見えないとしても、あれでは主人公があまりにお馬鹿すぎます。
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