「岡嶋二人」のコンビ解消後の井上夢人の初の長編第1作。
新興宗教の警備員として山梨県の小淵沢に行った主人公の西岡。新興宗教は近隣との軋轢がひどく、しかも、勤務第1日目に道場が火事となり教祖は焼死、主人公は首となる。 仕方なく東京に戻ったが、火事以来なぜか頭の中から正体不明の女性の声が聞こえるようになるのに気付く。頭の中の「誰か」とは誰なのか。どうして彼の頭に入ってしまったのか。衝撃のラストが待っている。
この本を読んだときには、新興宗教のことなど興味がなかったが、その後起こった某宗教をめぐる事件を考えると、この作品中の宗教は某宗教をモデルにしたのではないかなと勘ぐってしまう。作品の舞台となる小淵沢は山梨県であるし、某宗教の拠点も山梨県であったのは(山梨の北と南で距離は離れているけど)偶然とは思えない。とはいえ、この小説が書かれたのは事件が表面化する何年も前であるし、それからすれば、著者の洞察力というものはたいしたものだと思わずにいられない。 僕自身、小淵沢はよく知っているので、最初小淵沢という名前が出てきただけで、この作品に惹かれて読み進んだ。 |