主人公は51歳の男。中堅商社に入社した男に降りかかる社内抗争の波と、それに伴うリストラで独立して会社を興し奮闘する中で一人娘の不登校や夜遊びに悩む普通の父親です。
僕自身まだ50代にはならないが、帯に書かれた「僕は50歳、色々あったけど「失われた10年」と呼ばれた1990年代をナントカ僕なりに乗り越えたー」という文句につい手に取ってしまった作品。そして1ページ目を読んで、もうこれは買うしかないなと思ってしまった作品です。とにかく、出だしの1ページ目のユーモア溢れた文章に引き込まれてしまいました。「50過ぎの人間が自らを僕と称し、〜」のところなんて、自分もこうしてサイトの中では“僕”と称しているので(もちろん、サイト以外では“私”と称しますが)、そうだよなあと頷いてしまいました。
しかし、この主人公、会社を辞めるのも実力がなかったせいではないし、退職後もしっかりノウハウを生かして会社を興しているのですから、決して負け犬ではないし、そういう点では非常にバイタリティのある男です。それに、娘の不良化(?)に対し、突き放さずに一人の人間としての娘を尊重しながら、奮闘する姿は格好良すぎますね。社会人としても家庭人としても真似はできないですね。
そのうえ、“桃ちゃん”というかつては好きであったが、今は良き友人である女性がいるなんてうらやましい限りです(^^;
この話は亡き叔父に向かって書くということで、若いときの叔父との交流や、叔父の奇妙な性的体験が挿入されていますが、それが現在の彼の社会人や家庭人としての生活にどう関わってきているのか、彼にとって叔父の存在は大きいものであるのはわかるのですが、ちょっと理解できませんでした。
かつて自分を裏切った友人が癌で死が間近なことに素直にかわいそうと思えない感情はよくわかりますね。相手が死の床にいようが、そんなに簡単に許せないものも当然あるでしょうから。
内容は暗いものでありながら、ユーモアのある読みやすい文章で(帯に書いてあるとおり!)、一気に読んでしまいました。 |