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百田尚樹の本棚

  1. 永遠の0
  2. 輝く夜

永遠の0 講談社文庫
 題名の「永遠の0」の「0」とは、太平洋戦争当時日本海軍が誇った「零式戦闘機」、いわゆる“ゼロ戦"のことです。物語は、司法試験に何度も落ち、自分の進む道を見失いそうになっている健太郎が、太平洋戦争中、特攻隊で出撃して亡くなった祖母の前夫のことをジャーナリストである姉から頼まれて調べることから始まります。
 物語の中心は、家族のためには死ねないと言っていた祖父がなぜ特攻隊となって帰らぬ人になったのかを孫たちが調べていくところにありますが、作者は彼らが祖父のことを聞くために訪ねた戦友たちに、単に祖父の人物像だけではなく、太平洋戦争の状況を語らせることにより、太平洋戦争とはどんなものであったのかを読者に明らかにしていきます。太平洋戦争において、どうして多くの悲劇が起こったかの事実が鋭く語られていきます。
 そういう点からは、戦後60年以上が過ぎ、戦争を経験しない人の方が多数となった今、この作品が文庫化されて多くの読者を獲得したことは、大きな意味があったのではないでしょうか。
 さらに、高山という新聞記者を登場させ、彼の口から特攻隊はテロリストだ、9.11のテロリストたちと何ら変わらない愛国者だと言わせることにより、当時そして現在のマスコミ批判もしながら、特攻隊として死んでいった若者たちの心情を語っていきます。
 ラストには思わぬ事実が明らかにされます。感涙ものです。
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輝く夜 講談社文庫
 クリスマス・イブを舞台にした5編からなる短編集です。どれもがイブらしいファンタジックなストーリーです。
 食べ物を与えたホームレスから3つの望みがかなうという鉛筆をもらった女性を描く「魔法の万年筆」。僕だったら悩みに悩んでできる限りの望みを手に入れようとしますが、さて、彼女が望んだものは・・・というお話です。
 クリスマス・イブの夜、心寄せる派遣先の社長と二人きりで残業し、食事をして帰ることになった派遣社員の女性を描く「猫」。派遣社員の恋の行方は・・・。
 捨て子として両親も知らず育ち、ようやく一人前の美容師になったとたんに不治の病に倒れた女性を描く「ケーキ」。ベッドで死を待つばかりの彼女に訪れた奇跡は・・・。
 飲んだ帰りに乗ったタクシーの中で本気で恋した昔の話をする女性を描く「タクシー」。工員であった女性がスチュワーデスと偽って交際したテレビディレクターとの恋の結果は・・・。
 連れ子を抱えて結婚、今は3人の子どもを持ち、幸せな毎日を送る女性が語る昔話を描く「サンタクロース」。一時はお腹の子どもと共に死のうと思った女性に訪れた奇跡は・・・。
 どれもがハッピーエンドの心温まる物語です。普通であればあり得ないと、突っ込みたくなる話ばかりです。でも、クリスマス・イブくらい、こういう奇跡が起きてもいいのでしょうね。心荒んでいるときに読むには一番の作品です。
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