題名の「永遠の0」の「0」とは、太平洋戦争当時日本海軍が誇った「零式戦闘機」、いわゆる“ゼロ戦"のことです。物語は、司法試験に何度も落ち、自分の進む道を見失いそうになっている健太郎が、太平洋戦争中、特攻隊で出撃して亡くなった祖母の前夫のことをジャーナリストである姉から頼まれて調べることから始まります。
物語の中心は、家族のためには死ねないと言っていた祖父がなぜ特攻隊となって帰らぬ人になったのかを孫たちが調べていくところにありますが、作者は彼らが祖父のことを聞くために訪ねた戦友たちに、単に祖父の人物像だけではなく、太平洋戦争の状況を語らせることにより、太平洋戦争とはどんなものであったのかを読者に明らかにしていきます。太平洋戦争において、どうして多くの悲劇が起こったかの事実が鋭く語られていきます。
そういう点からは、戦後60年以上が過ぎ、戦争を経験しない人の方が多数となった今、この作品が文庫化されて多くの読者を獲得したことは、大きな意味があったのではないでしょうか。
さらに、高山という新聞記者を登場させ、彼の口から特攻隊はテロリストだ、9.11のテロリストたちと何ら変わらない愛国者だと言わせることにより、当時そして現在のマスコミ批判もしながら、特攻隊として死んでいった若者たちの心情を語っていきます。
ラストには思わぬ事実が明らかにされます。感涙ものです。 |