送電施設を破壊するテロ事件が相次ぎ、東京都は必要電気量が足りない状況に陥る。テロリストからの要求がなされない中、東都電力の担当者は輪番停電という方策で都全体が停電になることを防ごうとするが・・・。
3月の東日本大地震による原子力発電所の罹災がもたらした電力不足で、初めて知った輪番停電という言葉が、すでに3年前にハードカバーで発売していたこの本で描かれているとは驚きです。今回の震災がなければ、輸番停電という言葉も知らなかったでしょうし、本を読んでいてもあまり切実に実感ができなかったでしょう。
次々に行われる犯人たちの犯行と、それに対応する東都電力の職員たちの必死な働きに、ページを繰る手が止まりません。犯行の背景にある外国人労働者問題や現代的な犯罪など、現在の日本の暗部も描かれており、非常に興味深く読むことができます。
ただ、残念なのは、犯人たちの結びつきがあまりに簡単に行われたこと。あれだけ、境遇の異なる者同士が、たまたまの出会いからあれだけの大きな犯罪を協力して起こすほど結びつくのか疑間です。
また、犯行動機も理解できないわけではありませんが、彼らの犯行により何ら罪のない人が命を奪われたことを考えると、そこに思いが至らない犯人に共感することはできませんでした。
作品中の電力会社の人たちも、どうにか停電を防ごうと昼夜を問わず働いていましたが、現実もあんな状況だったのでしょう。 |