初めて読んだ福田栄一さんの作品です。
物語は、リサイクルショップに持ち込まれた机の引き出しの中に“助けてくれ、監禁されている、警察に連絡を”と書いてある紙切れを見つけた女性・美哉がその真相を探ろうとするところから始まります。「え!こんなことだけで真剣に自分で行動を起こそうとするの?せめて警察に通報するぐらいでしょう。出だしが、これではなぁ・・・」というのが正直なところの読み始めの感想でした。机があったスーパーを見に行った美哉が、そこで偶然行方不明事件を知っている老人に会ったのも、あまりにご都合主義です。途中で投げ出しそうになってしまいましたが、我慢して読んでいくと、これが意外におもしろくなっていきます。
監禁されている人を探そうとする美哉。老女から身内に殺されてしまうと打ち明けられ、老女と一緒に住むことになった泰夫。結納に立ち会ってもらうために家出後初めて親に会いに行く棗とその恋人の義人。話はなんら関係ないと思われるこの登場人物たちを交互に描いていきます。ミステリ好きだと、こうした構成のミステリだと、作者がどういうトリックを仕掛けようとしているのか、だいたいわかってしまいます。あれですよ、あれ。
ところが、それだけでなく、最初の1ページと、それ以後挿入される何者かによる独白が、またまた読者を騙します。これには僕自身も最後まで騙されてしまいました。てっきり、これは○○が話しているのだなあと思っていたのですけど。
最後はあっけなかったですね。もう少しきっちりと謎解きをしてもらいたかった気がします。 |