初めて読んだ藤沢作品です。藤沢周平さんの最高傑作はという問に必ず挙がってくるのがこの作品です。
文四郎は普請組に属する牧家の嫡男であったが、父親がお家騒勤に巻き込まれて切腹を命じられ、お家取りつぶしにはならなかったものの家禄を減じられ城下はずれの長屋住まいとなる・・・。
初めて藤沢周平作品を読む僕は知りませんでしたが､舞台となるのは藤沢作品にはお馴染みの海坂藩だそうです。父親が死に嫡男として母を助けて生きていこうとする文四郎の男らしい心持ち、そんな彼を助け支える島崎与之助や小和田逸平との友情、そして、恋心とはお互いまだ意識しない頃の隣家の娘・ふくとの別れ、そして彼女が殿の側室となって彼の前に現われる驚きの展開、さらには再び藩内の勢力争いが賑やかになり、彼の身辺にも不穏な動きが出てくるなど、お家騒動を背
景に、時代小説という形を取りながら、文四郎の成長を描いていく青春小説としても読むことができます。
父親の敵である有力者の権謀術数に文四郎がどう対処していくのか、剣の使い手として彼の前に立ちふさがる者との戦いはどうなるか（終盤、彼を殺そうとする者が出てきますが、それは誰なのかもおもしろいです｡）など、わくわくドキドキの展開でいっき読みでした。最高傑作といわれるだけのある作品でした。今更ながらですが、おすすめです。 |