(ちょっとネタばれ)
自分と似ている人は、世の中に2人はいるとよく言われます。ドッペルゲンガーと呼ばれます。この作品では、容姿が似ているだけではなく、自分と同じ記憶を持つ人間が存在するという話です。
自分のバイ・ロケーション(二重存在)が突然現れた忍は、彼女と同じようにバイ・ロケーションの存在に悩む人々のいることを知り、彼らの作る「もう一人の自分であるバイロケーションを何とかする会」に入ります。彼らとともに対応を考えるうち、メンバーが一人また一人と死んでいきます。
第17回角川ホラー小説大賞長編賞を受賞した作品です。おもしろいという評判を聞いて、本屋さんで手に取り購入した作品でしたが、これは拾い物の1冊でした。
自分の分身がどこかで勝手に動き回っているという事態は恐怖です。こちらが知らないうちに金はなくなるし、対人関係で何をしているかと思うと、主人公たちのようにバイロケーションを抹殺しようと考えるのも無理からぬところです。バイ・ロケーションには本人の記憶もあるのですから、他人はもちろん、本人自身がどちらかもわからないとなれば、本物だと思っていた者が実はバイロケーションだったということも考えられるというのは怖ろしいことです。
この作品では、どうしてそういうことが起きるのかということにはあまり深く触れずに、ラストのある“オチ”に向かって進んでいきます。ミステリ好きには予想はついてしまいますが、悲しい結末は読ませます。 |