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ほしおさなえの本棚

  1. ヘビイチゴ・サナトリウム
  2. 天の前庭

ヘビイチゴ・サナトリウム 東京創元社
 東京創元社の「ミステリ・フロンティア」第二回配本です。第一回配本があの伊坂幸太郎氏の「アヒルと鴨のコインロッカー」だったので、今回も期待して購入しました。
 中高一貫教育の女子校で生徒が屋上から落ちて死亡します。その後、彼女の幽霊が出るという噂とともに、彼女が国語の男性教師と関係があったという噂が構内に流れます。そうした中、国語教師も校舎から墜落死します。果たして彼らの死は自殺なのか、他殺なのか。
 彼が死の直前に残したポール・オースターの「鍵のかかった部屋」、国語教師の自殺した妻が残したネット上のウェブ・サイト「ヘビイチゴ・サナトリウム」、国語教師が新人賞を受賞した小説、そして女生徒との仲をあからさまに書いた原稿等々、様々な事実が錯綜して事件を複雑にしていきます。三人称で書かれた物語の途中に一人称の男と女の話が挟み込まれています。男の方は男性教師だと分かりますが、女性の方は誰なのか。
 女子校を舞台にしたミステリです。言ってしまうと簡単ですが、僕には女子校の中の実態というのがよく分かりません。共学校と違って、生徒同士の中はあんな関係になるものなのでしょうか。物語は解決を見たかと思うと、さらに次の疑問が提示され、最後に新たな事実が出てきます。非難を覚悟で言わせてもらうと、女性は怖いです。それにしても、最後に指摘される犯人の真の動機はいったい何だったのでしょうか。その辺のところが、僕には今一つ理解できなかったのですが。
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天の前庭 東京創元社
 東京創元社ミステリ・フロンティアシリーズの1冊です。ほしおさんとしては、「ヘビイチゴ・サナトリウム」に続く2冊目となります。
 中里柚乃は、高校1年の3月に交通事故に遭い、意識不明のまま、9年後に奇跡的に目を覚ましますが、彼女は記憶喪失になっていました。彼女が事故前にパソコンで書いていた日記には、ドッペルゲンガーを見た翌日に失踪した母のこと、自分そっくりの女の子ユナとの出会い、父と若い女性との親しげな様子などが書かれていました。しかし、目覚めてから再会した高校時代の友人白荻尚や神林徹からは、彼らはユナという女の子には会ったこともないと言われます。
 果たしてユナという女の子は存在するのか、中里柚乃、白荻尚、有島秀人、神林徹の4人が記念に文字を刻印したボールペンとともに見つかった白骨死体は誰なのか、行方不明となっている母はどこにいるのか、母が見たドッペルゲンガーとは何だったのか、父といた若い女性は誰なのか、そしてところどころに挿入される世紀末らしき風景はいったい何を意味するのか等いろいろな謎が錯綜します。もつれた糸がどのように解かれていくのか、早く知りたくてページを捲る手が止まらず、一気に読了しました。
 最初は青春ミステリという感じの出だしです。しかし、途中で秀人の両親の死亡や柚乃の母親の失踪に新興宗教の影が見えてサスペンス風になったり、ドッペルゲンガーやタイムスリップの話が出てきて、SFっぽくなったりして、この話がどこに収斂していくのか、ミステリとしての解決になるのか、はたまたSFとしての解決になるのか、非常に興味深く読み進むことができました。
 ただ、あまりに謎が多かったため、最後の謎解きはいまひとつすっきりしませんでした。結局この作品はミステリだったのでしょうか、SFだったのでしょうか。
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