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堀川アサコの本棚

  1. 幻想映画館

幻想映画館 講談社文庫
 幽霊の見える女子高校生・スミレ。彼女は、若い女性と浮気をしている父の後をつけていって、不思議な映画館に迷い込んでしまいます。ハードカバーで刊行された際は「幻想電氣館」という題名でしたが、文庫化に当って改題しての刊行です。シリーズ作品で、第1作は「幻想郵便局」という作品ですが、そちらは未読。幽霊ものが好きな僕としては、内容以前に、気になってしまって購入です。
 ダリ髭の支配人、昔懐かしいレトロな映画館が好きな映写技師、そして幽霊の支配人の妻という個性豊かな3人に囲まれてスミレは映画館でアルバイトを始めます。
 その映画館は実は‥・というところは、第1作の「幻想郵便局」を読んでいる人はもちろん、読んでいなくてもすぐにわかります。ファンタジーかと思いきや、クラスメートの祖母の幽霊騒動や悪徳セールスマンの行方不明事件も加わり、ミステリの様相も見せます。でも、スミレの一人称の語りがどうも馴染めず、何だかドタバタ喜劇を見ているような感じでした。
 強烈な個性を持っていそうな、スミレの一族に君臨する大叔母があまり描かれていなかったのは残念。彼女にも何かありそうな思わせぶりな書き方がされていたのに。また、ある二人の別れのシーンもあっさりしすぎていて感動も何もありません(この作品の雰囲気からは、これでいいのかもしれませんが。)。 “幽霊もの”は好きですが、こういう雰囲気はちょっと合いません。
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