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広瀬正の本棚

  1. マイナス・ゼロ
  2. ツィス
  3. エロス
  4. 鏡の国のアリス

マイナス・ゼロ 集英社文庫
 タイムマシンに乗って、自分の少年時代である第二次世界大戦の時代へとやってきてしまった主人公は・・・。
 タイムパラドックスが生じないように緻密に計算されて書かれた作品。奇想天外のアイディアで読者を引きつけます。SF興味だけでなく、当時の世相が細かく描かれており、その時代を知らない僕らにもその時代の雰囲気を味合わせてくれます。
 高校時代の同級生が、卒業文集で広瀬正を絶賛していたのを覚えていて、文庫化されたときにふと手にとって読み始めました。そのとたんに、その魅力に引き込まれてしまいました。途中頭がこんがらがって、整理をしなければならない部分もありますが、SFファンでなくても十分楽しむことができます。オススメです。
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ツィス 集英社文庫
 ツィスとは「ニ点嬰ハ音」、ドのシャープで557ヘルツの純音のことだそうです(音楽に疎い僕にはこう説明されても全くどういう音か分からないのですが。)。
 ツィスが聞こえると神奈川県の一人の女性の訴えから始まったこの正体不明の音が、マスコミの報道とともに急ピッチでその音量と聞こえる範囲を拡大してゆきます。やがて、首都圏一帯の人々は常時ツィス音にさらされるようになり、都内でも人が住めないくらいの音量となってきます。人々は都内からの疎開を始め、やがて都内には誰もいなくなります・・・。
 この作品は、SF小説であり、ツィス音という原因不明の災害に対する人々の苦闘ぶりを描くパニック小説でもあります。タイムトラベルやパラレルワールドを題材にしていた広瀬作品としては珍しく舞台は素直に現代。そのせいか、リアルティがあります。音を扱っているのは、小説家である作者広瀬の別の顔、ジャズメンの顔が現れているのでしょう。最後にはドンデン返しが待っていますが、ちょっと、えっ!そんなこと!と僕は思ってしまったのですが・・・。
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エロス 集英社文庫
 「もしもあの時・・・だったら」をテーマにした作品。
 物語は、「昭和45年現在」のある大女性歌手の歌手生活37周年リサイタルの後、雑誌記者が歌手に「もしもあの時」というテーマで自分の青春を振り返って語ってくれないかというインタビューで始まります。
 話は「現在」と「過去」が交互に語られ、途中から「もう一つの過去」が歴史の分かれ道として介入してきて・・・・。ここからは読んでからのお楽しみ。お約束どおり、簡単には終わりません。著者の出世作「マイナス・ゼロ」と同じように戦前の生活が詳細に語られています。著者にはこの当時の思い入れがあるのでしょうか。
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鏡の国のアリス 集英社文庫
 青年が銭湯に使っていて、ふと気がつくと、そこはいつの間にか女湯になっていた。追い出された彼が迷い込んだのは彼が住む世界とは左右が逆になっている「鏡の中の世界」だった。
 美容整形医の私のところに性転換手術の相談に来た青年が語る不思議な体験。いったい、彼は僕らの世界から鏡の世界へ迷い込んだのか、それとも彼は鏡の世界から僕らの世界へ迷い込んだのか、さて果たしてどちらなのでしょう。
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