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平山夢明の本棚

  1. 独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル 光文社文庫
 2007年版の「このミス」で国内編第1位になった短編集です。表題作ほか7編からなります。
 発売時からサイトで評判がよかった作品集ですが、不気味なカバー絵に、内容を見ると、スプラッターもののような作品が目につき、好みではないなあと未読でした。正直「このミス」第1位となったときはびっくりしましたが、今回文庫化されたのを機に読んでみました。
 この作品集の成功は、作品集の題名ともなった表題作の題名に理由の一つ(それもかなり大きな)があったのではないでしょうか。インパクトある題名ですよね。横メルカトルと聞いてまず頭に浮かんだのは、麻耶雄高さんの作品に登場する名探偵“メルカトル鮎”でしたが、地図が独白する表題作を読んで、そういえば地理でメルカトル図法のこと習ったことがあったっけと、記憶が蘇りました。
 内容的には、やはり「ニコチンと少年」、「Ωの聖餐」、「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」のような作品は苦手です。つい場面を想像してしまって食欲がなくなります。特に「Ωの聖餐」には参りました。
 その中で、これはおもしろいと思ったのは、近未来を舞台にした2作品、「オペラントの肖像」と「卵男」です。どちらもラストでミステリ的などんでん返しがある作品で好みです。
 「すまじき熱帯」は、フランシスフォード・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」を完全に意識した作品でしょう。未開の奥地に自分の王国を築くとか、王国を築いた男を殺しに行くとか、映画を観た人だったらすぐ類似点を思い浮かべることができます。それにしても、その国の人の言葉をあんな風に記すとは・・・唖然。
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