親子3人の惨殺事件。その後唯一難を逃れた長女の友人の女子高校生が代々木公園で他殺自体で発見される。惨殺事件を担当する女性刑事は、代々木公園で見かけた、かつて敏腕刑事といわれたホームレスを日当2,000円で雇い、事件を追う。
いくら何でも、刑事がホームレスまで転落するのだろうか。そのへんのところは、単に刑事が転落するきっかけとなった事件が述べられるだけで、刑事の心情はあまり深く書き込まれていない気がする。まあ、ホームレスの中にはいろいろな職歴の人がいるようなので、元刑事もありうるかな?とも思うのだけど。ホームレスの元刑事が事件を解決するなんて、設定としてはおもしろいけれど、組織力を持つ警察が解決できないことを、そんなに簡単に解決できるのかなというところが、今一つ納得できない。
(再読感想) 探偵役が軽口を叩く男というのは、柚木草平シリーズに通じるものがあります。そして、やたらにもてるという点においてもです。ただ、この作品の主人公椎葉は、自分の娘を轢き殺してしまったという心の苦しみから警官を辞めたという過去があるにしては、ちょっと軽口叩きすぎという感があります。思わぬ悲劇からホームレスまで転落した椎葉の姿と、減らず口をたたく椎葉の姿が重ならないんですよね。だいたい、あんなしゃれた会話をする男がホームレスまで転落するかのか?と思ってしまいます。
とはいえ、椎葉と、やたら張り切って突っ張る夕子、そして生意気な美少女の美亜との会話はおもしろいです。特に、椎葉がしゃれたセリフを言っても、美亜が「あんた、普通に喋れないの」というところには思わず笑ってしまいました。中年と女子高校生の年齢の差が如実に出ていますね。
ミステリーとしてのおもしろさはいまひとつ。ラストに突然に明らかにされた真実なんて、わかるわけないですよねえ。そこまでに、全然明らかにされていないことを突然言われても「そうだったのかあ。やられたなあ」という通常ミステリを読んだ後にある爽快感は得られませんでした。
結局、この作品のおもしろさは、ホームレス探偵という設定と、椎葉、夕子、美亜たちのキャラクターと会話にあるといえます。椎葉のしゃれたセリフの部分に付箋を貼っておいたので、今度使ってみよう! |