仕掛島 | 東京創元社 |
初めて読む東川篤哉さんの作品です。いわゆる「新本格派」のような大掛かりなトリックのありそうな「仕掛島」という題名とカヴァー絵のインパクトに惹かれて読んでみました。 岡山県で出版社を経営する西大寺吾郎が亡くなり、その遺言状公開のために瀬戸内海の孤島「斜島」にある西大寺家の別荘「御影荘」に一族が集められる。遺言状では遺産は、吾郎の妹・雅江、妻・香苗、長女・瑛子、長男・慶介、次女・優子、そして甥・鶴岡和哉に分配され、更には彼に長年仕えた執事と家政婦夫婦や主治医にも贈与があり、誰も文句がないとみられたが、翌朝、鶴岡和哉が死体となって発見される。折しも、台風のため警察は島に近づけない中、行方不明だった和哉を探すために雇われた探偵・小早川隆生が事件解決に乗り出す・・・。 物語の舞台となるのは岡山県の瀬戸内海にある「斜島」。カヴァー絵にあるようなスキーのジャンプ台のような一方は切り立った崖になっている島です。ただ、この絵のとおりだとすれば、スキーのジャンプ台の角度は相当なもので、崖の一番上に行くのは簡単ではない気がします。犯人が何の装備もなく崖の上に逃げるなんてことができますかねえ。それにロープを付けて飛び降りたら崖に叩きつけられてしまうのでは。その点がどうも疑問でのままで、謎解きがされた際にも、素直にびっくりできませんでした。 また、殺人のトリックは確かに島田荘司さんの作品のような大掛かりなものですが、いまひとつ実際にどうするのかが個人的にはヴィジュアルとしてその映像を頭の中にうまく思い描くことができません。 所長を務める母親に頭の上がらない探偵事務所の探偵・小早川隆生と父の弁護士が遺言状公開のプレッシャーから倒れてしまい、その代理を務めることになった弁護士の矢野沙耶香がホームズとワトソン役となり事件の謎を解いていきます。その迷コンビぶりは面白かったのですが、笑いもある文体は本格推理にはちょっと合わないなあと個人的には苦手です。 東川さんには「館島」という作品があるそうですが、読んでいくとこの作品の登場人物が「館島」の登場人物と関わりがあることが明らかにされます。東川ファンには嬉しいところではないでしょうか。 |
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