東京大学を突然退学し故郷に戻ってきた内村実之の兄。帰ってきたとき、兄は腹部に傷を負っており、「三年坂で転んでね」という謎の言葉を残して数日後に息絶える。実之は東京大学受験を目指すとともに、兄の死の原因を探るために、東京へとやってくる。一方、自分が人力車に乗って大火の東京の町を走る夢を見た予備校の講師鍍金は、近頃頻発する放火事件の謎を探ろうとする。
第52回江戸川乱歩賞受賞作です。江戸から東京へと変わった時代の東京の様子が描かれているので、東京をよく知っている人はあの辺はそんな感じだったのかと思いを馳せることもでき、なかなか楽しいかもしれません。ただ、東京をよく知らない人には、作者の蘊蓄は、ちょっと退屈になるかも。
兄の死の謎を探る内村の章と東京の大火事の原因を探る鍍金の章が交互に語られていきますが、この2つの話がどこで接点を持ってくるかがこの話のおもしろいところです。ただ、様々な謎の中で東京の大火とその中を駆け巡る人力車の謎に一番興味を惹かれたのですが、その謎解きはそれほどの驚きではなかったというのが正直な感想です。う〜ん、文庫本の帯に書かれた"綾辻行人氏大絶賛"に期待しすぎたかな。 |