東京創元社のミステリ・フロンティアシリーズです。
主人公夏貴は14歳の中学生。ある日、親友の家が火事となり、夏貴が止めるのを振り切って両親を助けるために家に飛び込んでいった親友は焼死します。悲しむ夏貴でしたが、夏貴の手に残された親友の携帯から彼の声が聞こえ、画面には彼の顔が現れます。火事の真相を調べて欲しいと頼まれた夏貴は、携帯の中の彼とともに事件の謎を追いかけます。
(ネタばれあり注意)
表紙の折り返しに書かれたあらすじによると、「携帯から語りかける友人との二人三脚で、夏貴が探り出した真相は・・・」とあります。これは、おもしろそうだと読み進んでいくうちに友人は○○○となります。ちょっと唐突すぎるのではないでしょうか。最後まで二人三脚でいって、最後に感動の別れがあると思っていたのですが・・・。期待はずれの展開となってしまいました。全体をとおしては、主人公と義父となるべき男との関わりなどおもしろい部分はあったのですが、そもそもの事件の動機が弱すぎるのではないかと思えます。少なくとも友人家族が殺される理由が今一つわかりません(それにだいたい、平日の昼間に放火して家族を焼死させることができるなんて考える人がいるのかなあ)。また、中学生を主人公とするいわゆる青春ミステリの体裁をとっていながら、重要な役どころで登場してきた中学生の女の子が、物語前半で舞台から退場していくのも納得いきませんでした。 |