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江國香織の本棚

  1. 神様のボート
  2. つめたいよるに
  3. 間宮兄弟
  4. なかなか暮れない夏の夕暮れ

神様のボート 新潮文庫
 突然いなくなってしまった愛する人を見知らぬ街を移り住みながら待ち続ける母。それを見守る娘。母と娘の視点で交互に物語は綴られていく。理由も分からず姿を消した男を必ず帰ってくると言ったにせよ、ずっと待ち続けていられるのだろうか。僕には理解できない。結末はこんなことでは安易過ぎるのではないかと僕は思うのだけど。それは男の読み方だろうか。
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つめたいよるに 新潮文庫
 今までに読んだ江國作品2作のうちの1作。江國のデビュー作「桃子」を含む21編を収録した短編集。この中では僕はやはり巻頭の「デューク」が秀逸だと思う。飼い犬のデュークが死んだ翌日乗った電車で、わたしが知り合ったハンサムな男の子との出会いと別れの不思議な一日が綴られている。ちょっと目頭が熱くなる作品。
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間宮兄弟 小学館
 兄・明信、35歳、酒造メーカー勤務。弟・徹信、32歳、学校職員。この兄弟、30歳を過ぎているのになぜか未だに男二人暮らし。物語は全く女性にもてない二人が一念発起して恋人を作ろうと、家でカレーパーティーを開いて、同僚教師や行きつけのレンタルビデオ店のアルバイト店員を呼ぶことから始まる。

 「恰好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟二人で住んでいるのが変、スーパーで夕方50円引きを待ち構えて買いそう、そもそも範疇外、ありえない、いい人かもしれないけれど、恋愛関係には絶対ならない、男たちなのだ」とは、あまりにひどすぎる。そのくせ兄弟の部屋は「なんだかとっても居心地がよく」、「親戚に行ったみたいなかんじ」で楽しい、とは、いったい女性たちは何を考えているんでしょう。勝手すぎやしませんか、女性の皆さん。ああ、なんか間宮兄弟がかわいそうだ!
 でも、確かに30歳を過ぎていまだに兄弟二人で住んでいるなんて、僕としてもおかしいんじゃないかとは思います。兄弟二人でゲームボードに興じたり、ジグソーパズルに凝ったり、酒が飲めない弟が代わりに飲むのがコーヒー牛乳、冬至には必ずかぼちゃを煮て、ゆず湯に入るなどなど、とにかく兄弟二人だけの特別な世界があるみたいです。
 兄はやせぎす、弟は小太りと結局見た目はよくないし、男は見た目ではない心だといっても、あの兄弟の不思議な世界に入っていくのは女性にとって勇気のいることでしょうね。
 これから間宮兄弟はどうなっていくのでしょう。たぶん全然変わらないのでしょうね。
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なかなか暮れない夏の夕暮れ  角川春樹事務所 
 「本の雑誌」の“新刊めったくたガイド”で書評家の北上次郎さんが「本を読むダメ男の小説」と紹介しており、更に「本の雑誌」が選ぶ今年前期のベスト10の第10位にも選ばれたので、読書好きとしては気になって読みました。
 主人公の稔は50歳で親の遺産で暮らし、本ばかり読んでいる男。物語は、そんな稔と海外にいる稔の姉の雀、友人であり、経理を見てもらっている大竹、稔の所有するアパートに住むチカとさやか、稔の元恋人の渚と彼女との間に生まれた波十、高校時代の友人の淳子など多彩な人々が登場し、彼らの日常が淡々と描かれていきます。
 稔のような好きなときに本を読みというような浮き世離れした生活がしてみたいと思った読書好きも多かったのではないでしょうか。そのうえ、自分から積極的に誘うわけでもない稔という男になぜか女性は惹かれるようで、何とも羨ましい限りです。
 それに比べ、稔の友人の大竹が哀れ。年の離れた若い妻に大竹が取った行動は、確かに「キモい」と言われそうですが、ちょっと気持ちはわからないでもないなあ。稔と渚の娘の波十が稔と同じ読書好きというのが、ちょっと羨ましいというか笑えます。
 入れ子構造のように物語の中には稔が読んでいる本の内容がそのまま記され、読者は稔と一緒にサスペンス小説のような物語を読むことになります。これがなかなかおもしろく、実際の物語以上に先が気になってしまいました。江國さん、今度本腰入れてミステリー書いてみたら? と思ってしまう1作。
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