少女の亡霊が徘徊するという時計館。その正体を探ろうと訪れた交霊会の9人の男女を待ち受ける殺人事件。またもやかの中村青司が設計したという屋敷で繰り広げられる連続殺人事件。作者が館シリーズの第1期終了を宣言した作品だけあって、それまでの4作より大部であり、内容も一番おもしろい。第1作で登場した人物が再登場している。
(再読感想) 建築家中村青司が建てた館で起きる事件を描く館シリーズ第5弾です。第45回日本推理作家協会賞受賞作です。今回は時計塔があり、建物の中には様々な時計が108個飾られているという『時計館』で事件が起きます。
大学を卒業し、出版社の稀譚社に就職した江南。幽霊が現れるという噂のある時計館に雑誌の特集で降霊会を行うためにやってきた江南ら稀譚社の社員と超常現象研究会の大学生。鍵をかけて閉じこもった時計館の中で、降霊会を行った夜から一人また一人と殺害されていきます。
文庫が新装改訂版になったのを機に21年ぶりに再読。密室殺人といっても中村青司の建てた館ですから、当然何らかの仕掛けがあるのは承知していますし、メインのトリックも頭の片隅に残っていたのですが、初読のときのように楽しく読むことができました。やっぱり、館シリーズは僕にとっての日本ミステリの読書の原点です(ただ、21年前に読んだ時のようなドキドキ感は正直ありませんでしたが。)
今回のメインのトリックは、外界から隔絶され閉ざされた空間の中で成り立つトリックであり、その場所が「時計館」だからこそのトリックとも言えます。シリーズの中で一番のおもしろさを争う作品ではないでしょうか(「暗黒館の殺人」はまだ読んでいませんが。)。
それにしても、中村青司の館だから、当然からくりがあるだろうと、なかなか気づかない江南くんにいらいらしながら読んでいました。 |