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綾辻行人の本棚

  1. 十角館の殺人
  2. 時計館の殺人
  3. 水車館の殺人
  4. びっくり館の殺人
  5. Another
  6. 奇面館の殺人
  7. 深泥丘奇談
  8. 深泥丘奇談・続
  9. Another エピソードS
  10. 深泥丘奇談・続続
  11. 人間じゃない
  12. Another 2001

十角館の殺人  ☆ 講談社ノベルス
 後日新本格派と呼ばれるようになる新人の輝ける第1作であり、館シリーズの第1作である。当時なんとなく書店で手に取り購入したが、それ以後講談社ノベルスで発行される新本格派の作品をむさぼるように読むきっかけとなった作品。
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時計館の殺人  ☆ 講談社ノベルス
 少女の亡霊が徘徊するという時計館。その正体を探ろうと訪れた交霊会の9人の男女を待ち受ける殺人事件。またもやかの中村青司が設計したという屋敷で繰り広げられる連続殺人事件。作者が館シリーズの第1期終了を宣言した作品だけあって、それまでの4作より大部であり、内容も一番おもしろい。第1作で登場した人物が再登場している。

(再読感想)
 建築家中村青司が建てた館で起きる事件を描く館シリーズ第5弾です。第45回日本推理作家協会賞受賞作です。今回は時計塔があり、建物の中には様々な時計が108個飾られているという『時計館』で事件が起きます。
 大学を卒業し、出版社の稀譚社に就職した江南。幽霊が現れるという噂のある時計館に雑誌の特集で降霊会を行うためにやってきた江南ら稀譚社の社員と超常現象研究会の大学生。鍵をかけて閉じこもった時計館の中で、降霊会を行った夜から一人また一人と殺害されていきます。
 文庫が新装改訂版になったのを機に21年ぶりに再読。密室殺人といっても中村青司の建てた館ですから、当然何らかの仕掛けがあるのは承知していますし、メインのトリックも頭の片隅に残っていたのですが、初読のときのように楽しく読むことができました。やっぱり、館シリーズは僕にとっての日本ミステリの読書の原点です(ただ、21年前に読んだ時のようなドキドキ感は正直ありませんでしたが。)
 今回のメインのトリックは、外界から隔絶され閉ざされた空間の中で成り立つトリックであり、その場所が「時計館」だからこそのトリックとも言えます。シリーズの中で一番のおもしろさを争う作品ではないでしょうか(「暗黒館の殺人」はまだ読んでいませんが。)。
 それにしても、中村青司の館だから、当然からくりがあるだろうと、なかなか気づかない江南くんにいらいらしながら読んでいました。
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水車館の殺人  ☆ 講談社文庫
 館シリーズ第2弾です。
 岡山県の山奥に建つ「水車館」と呼ばれる建物。そこでは1年前に、女性が墜落死し、一人の男が行方不明となり、さらに別の男がバラバラ死体とされて焼却炉から発見されるという事件が起きていた。1年後の同じ日、当時館にいたメンバーがまた集まってきました。そこに行方不明の男の友人だという島田潔という男が現れ、事件の幕が開きます・・・。
 館はあの「十角館」と同じ中村青司の設計によるもの、館の主は交通事故によって車椅子の生活で、顔には仮面という姿、年の離れたその妻は幼い頃連れてこられて以来館から出たことがないという、設定からしてもう何か起きるよという感じです。
 「十角館の殺人」を何気なく手に取ってから、当時台頭してきた若手作家たちのいわゆる“新本格派”にすっかり魅了され、彼らの作品が発売になると端から読んだのですが、この「水車館の殺人」は、大きな衝撃を受けた「十角館の殺人」に次ぐ綾辻さんの2作目ということもあって、ノベルスで発売された当時もすぐ買って期待して読んだ本でした。
 17年の時を経ていたので、今回再読しても内容はほとんど忘れていました。犯人だけは読んでいるうちに思い出したので、その点、最初読んだときより興が削がれてしまいましたが、これは再読なので致し方ないところでしょう。ただ、今回再読して思ったのは、最初からこのパターンのトリックの場合は、○○(ネタばれになるので隠します)を疑うべきなのですが、謎解きではやはりそのとおりだったのは、ちょっとがっかりでした。当時は「な〜んだあ」と思った記憶はありませんので、トリックには気づかず読んでいたと思うのですが、少しはミステリーの読み方がわかってきたのでしょうか(笑)
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びっくり館の殺人 講談社ノベルス
 講談社のミステリーランドの1冊として刊行された作品の講談社ノベルス版です。綾辻さんの館シリーズの1冊でもあります。ミステリーランドの1冊として刊行されたときは、割高な気がして買うのを躊躇したのですが、ようやく読むことができました。
 「かつて子どもだったあなたと少年少女のため」というミステリーランドの性格から、今回は小学生が主人公であり、今までの館シリーズとは趣を異にしています。江南孝明は登場しませんし、鹿谷門実も特別出演といった感じの登場です。
 “びっくり館”自体も、中村青司が設計したにしては、他の館と比較してそれほど驚くような“館”ではなかったですね。ストーリーとしても、序盤でだいたいの全体像がわかってしまい、他の館シリーズと比べてミステリとしてもいまひとつ楽しむことができませんでした。
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Another  ☆ 角川書店
 病気療養のため、亡き母方の田舎の中学校に転校してきた榊原恒一。彼は、入院していた病院で出会った眼帯をした見崎鳴(ミサキメイ)がクラスメートであることを知り、次第に惹かれるようになるが、他のクラスメートは彼女のことが目に入っていない様子。そんなある日、母親の交通事故を聞いて早退をしようとした女生徒が悲惨な死を遂げる。クラス内に広がる動揺。果たしてメイは何者なのか。クラス内に隠された謎は何なのか・・・。
 これはおもしろいです!!久しぶりに読む綾辻さんの作品でしたが、700ページ近い大部をあっという間に読了してしまいました。恒一にしか見えないメイの正体は幽霊なのか、3年3組に隠された謎は何なのか、気になることが多くて、読んでいるうちにどんどん物語の中に引き込まれていきます。
 学校を舞台にしたホラー系の作品といえば、恩田陸さんの「六番目の小夜子」のような趣の作品かなと思っていたのですが、意外にもホラー風味だけでなくミステリとしても十分堪能できる作品となっています。というより本格ミステリとも言っていいかもしれません。もちろん論理的には語ることのできない不思議な現象が起こる中でのことですが、“○○は誰なのか(何のことかは読んでのお楽しみ)”という謎解きは非常に論理的に明らかにされます。ラストの展開はだいたい予想がついたのですが、そこでもうひとひねり、読者を驚かす仕掛けがありました。さまざまなところに伏線が張ってあり、読みながら違和感はあったのですが、その正体がこれだったとは最後までわかりませんでした。綾辻さん、見事です。

 ※ただ、一つだけ文句を言わせてもらえば、恒一が謎を聞き出そうとすると携帯に電話が入るなど、何度も邪魔が入って結局そのまま話が中途半端で終わってしまうシーンが多かったこと。恒一も簡単に引き下がってしまいますが、普通はもっと食い下がるだろう!とイライラしてしまいました。
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奇面館の殺人 講談社ノベルス
 館シリーズ第9作目です。今回舞台となる中村青司が建てた館は「奇面館」です。迷路館で出会つた日向京助に頼まれて、彼になりすまして奇面館を訪れることとなった鹿谷門実。館には主人と3人の使用人、招待された6人の男。人間の表情に恐れを感じる主人の前では用意された仮面をかぶらなければならないルールの中、夜が明けたとき、主人らしき、首と手の指をすべて切り取られた死体が発見される。そして、鹿谷たち客は睡眠薬で眠らされているうちに何者かによって仮面をつけられ鍵をかけてはずせない状態になっていた。
 東京の外れにある奇面館付近では十年ぶりの大雪で、まさに“吹雪の山荘”状態。今では携帯が普及し、どこに行ってもだいたいは携帯がつながるのですが、この作品の舞台は1992年なので、まだ携帯もほとんど持っている人がいない中で電話は壊されるというお決まりの状況です。果たして殺されたのは本当に主人なのか。首と手の指が切断され、それぞれの顔は仮面によってわからないとなれば、被害者の入れ替わりを頭に思い浮かべてしまうのですが、そこは綾辻さん、一筋縄ではいきません。さらに、あの中村青司の館ですから、当然カラクリが隠されているわけですが、今回のカラクリが何なのかも大いに興味をかき立てられました。
 怪しげな執事と管理人もいますし、もうこれは新本格派の原点ですね。登場人物の中の紅―点、アルバイトのメイド役の新月瞳子の存在がこの事件の有り様に大きな影響を及ぼすのですが、その点も伏線を張っており、無理のないようにうまく考えられています。ラストに鹿谷らが奇面館に招待された理由が明かされます。だいたい、その事実を鹿谷は館への訪問前からわかっていたはずですが、読者には隠されていましたね。何となく、その辺りの書きぶりがおかしかったはずです。その設定はいくら何でも現実には無理だろうと思うのですが、それも懐かしい“新本格派”を楽しむためには受け入れなければなりませんね。
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深泥丘奇談  ☆ メディア・ファクトリー文庫
 “大文字焼き”ならぬ“人文字焼き”が行われるなど、京都をモデルにしたらしい街で、ミステリ作家の“私”が遭遇する不思議な出来事を描く9編からなる連作短編集です。
 どの話もラストで不思議な現象や“もの”についての明確な説明がなされないまま終わり、読者にとっては、何かスッキリしないものを抱えたまま物語は進んでいきます。いつかはすべてが明らかになるのではないかと思いながら、とうとうラストまで読んでしまいましたが、明確な回答は得られませんでした。
 街自体も不思議な雰囲気をたたえていますが、登場人物もおかしな人物ばかりです。情緒不安定になる“私”が通う深泥丘病院の同じ顔をした石倉(一)(二)(三)という医師は、眼帯を右目にしているか左目にしているか、あるいはメガネをかけているかで区別するしかない人物たちです。そして、いつもどこかに包帯を巻いている看護師の咲谷。この看護師が石倉医師たち以上に怪しげな雰囲気を纏って“私”に関わってきます。
 怪しいといえば、なぜか“私の妻”も“私”と違いすっかりこの街に溶け込んで、私以上にこの街のことを知っています。猫目島というという怪しげな島の出身というのも気になります。主人公の“私”自身も不思議な出来事に遭遇しながら、その記憶がすぐにあやふやになってしまうという、ちょっとこれも怪しいまま。喉に魚の小骨が刺さったような感じで読了です。
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深泥丘奇談・続  ☆ メディア・ファクトリー文庫
 深泥丘奇談シリーズ第2弾です。京都をモデルにした街で起こる不思議な出来事を描く10編が収録されています。
 前作では語り手はすべてミステリ作家の“私”でしたが、今回10編の中で「ホはホラー映画のホ」と「ソウ」の2編は黒鷺警察署の神屋刑事が語り手となっています。どちらも、ホラー映画を題材にしており、ちょっとユーモア風味も加わった作品になっています。また、「心の闇」と「ホはホラー映画のホ」は、夏目漱石の「夢十夜」へのオマージュで、「こんな夢を見た」で始まる作品になっています。
 前作同様、どの話もラストは不思議な現象やものは不思議なまま終わります。明確な解答は今回も出されません。“私”も相変わらず、精神的に不安定で、自分の身に起こった不思議なことの記憶がすぐにあやふやになってしまいます。深泥丘病院の医師、石倉医師(一)(二)(三)も兄弟なのかどうかも明らかにされません。看護師の咲谷も、存在が怪しげなままです。いったい、どこまで続くのでしょうか。気になります。
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Another エピソードS 角川書店
 「Another」の登場人物である見崎鳴が、夏休みのクラス合宿の前に、夜見山を離れて過ごした地で起こった出来事を榊原恒一に語るという形をとった作品です。
 見崎鳴の語るストーリーの語り手(ややこしい!)は、幽霊。賢木晃也は、中学生の頃、夜見山北中学3年3組だったが、呪いにより事件事故に巻き込まれることを恐れ、夜見山市から転居し、今は鳴の別荘の近くに住む青年。冒頭、その青年が転落事故により死亡し、気がついた(!)ときには幽霊となっており、転落時の記憶を失っていたというところから話は始まります。幽霊としてさまよい歩く中で、彼は、自分の死が隠されていることを知り、彼の姿が見えるという見崎鳴と自分の死体の行方を捜します。
 語り手である賢木は、今は夜見山市にはいないし、既に青年となっているので、夜見山北中学3年3組の呪いは直接関係ありません。そういう意味では、見崎鳴は登場しますが、「Another」の続編というより、サイドストーリーといった方が適切です。綾辻さんがファンタジーを書くわけはない、きっと何らかの仕掛けがあるだろうと思って読み進めたのですが、ある程度読むと、幽霊の正体もだいたい想像できてしまいます。残念ながら「Another」を読んだときのような驚きはありませんでした。伏線の回収など、相変わらず綾辻さん、うまいですけど。
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深泥丘奇談・続続  ☆  角川書店 
 シリーズ第3弾、これにて最終作だそうです。怪異が語られますが、それに対する回答は何ら提示されず、謎は謎のまま終わるというのはいつもどおり。最終作ということで、何らかの謎解きがなされるのではと期待していましたが、そこは期待外れでした。不思議な話は不思議な話のままです。                      `
 怪しげな登場人物たちの正体も明らかになりません。ウグイス色の眼帯の左右とウグイス色のフレームの眼鏡で区別をする石倉医師(一)(二)(三)に加え、今作には、ウグイス色のコンククトをしているのか目がウグイス色の石倉(四)も登場(彼だけは医師ではありませんが)。更には彼ら以上に存在が怪しい看護師の咲谷も、今作ではいっそうの怪しさを醸し出しています。また、作家の妻も実はすべての怪異の謎を知っているような気がするのですが、これも明らかにされず。これでシリーズが終了とはすっきりしません。
 主人公の作家が肝心なときには目眩を起こし、気がつけば記憶が曖昧になっているというパターンなので、もしかしたらこの主人公はすでに死んでいるのではないか、あるいは彼は自分が記憶しているより以前からこの町に住んでいた(でも、その記憶を失っている)のではないかとも考えたのですが・・・。
 “タミフル”ならぬ“タマミフル”とか、“雪の密室”ならぬ“猫の密室”なんて、字面だけ見ると笑ってしまいそうなのに、想像するとちょっと怖いですね。
 相変わらず装丁、挿画が素晴らしいです。 
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人間じゃない  講談社 
 単行本に未収録の作品を発表順に収録した作品集です。5編の中・短編が収録されています。
 「赤いマント」は館シリーズの1編「人形館の殺人」の後日譚です。後日譚といっても「人形館の殺人」と事件の繋がりがあるわけではなく、「人形館の殺人」の登場人物である架場久茂と道沢希早子がこちらの作品に登場しているという繋がりです。単純にひとつの短編として読みましたが、ミステリらしいミステリです。ストーリーはトイレに入っていると「赤いマントをかぶせましょうか。」という声が聞こえてきて、「はい」と答えると血まみれになって死んでしまうという都市伝説がモチーフになっています。希早子が夜中の公園前で会った塾の教え子の由紀がトイレに入るので入口の前にいたら「あかーい、マントをかぶせましょうか」という囁きが聞こえ、由紀の悲鳴に個室の戸を開けようとしても開かず、静かになってあっけなく開いた個室の中で教え子が血だらけになっていたという事件です。
 「崩壊の前日」は「眼球奇譚」に収録されている「バースデー・プレゼント」の姉妹編だそうです(「眼球奇譚」も読んだはずなんですが、まったく覚えていません。)。綾辻さん自身が述べているようにホラーというより幻想小説です。
 「洗礼」はこの作品集の中でいちばん長い作品。「どんどん橋落ちた」の番外編だそうです。「どんどん橋落ちた」がとんでもない犯人がいた作品が収録されていたという印象は残っているのですが、まったく内容は覚えていないので、そもそも番外編といってもどういうことかわからず。ストーリーは大学生のバンドのメンバーが殺害される事件の謎を解くミステリです。「ダイイングメッセージ」や「読者への挑戦」が登場する王道のミステリです。
 「蒼白い女」は「深泥丘奇談」の番外編で先頃刊行された「深泥丘奇談・続々」の「減らない謎」の前に位置するエピソードだそうです。喫茶店である不気味な女性を目撃するジャンルはホラーです。ラストは怖いですねぇ。
 表題作の「人間じゃない」は副題が「B〇四号室の患者」から推測できるように精神病棟を舞台にした「フリークス」の「患者」シリーズの番外編です。「星月荘」という別荘にやってきた4人の男女。そのうちの1人の女性が「人間じゃないものがいる」と怯え出す。その女性は部屋に鍵をかけて寝たが、明け方の悲鳴で飛び起きた3人が鍵がかけられたドアを破って中に入ると、そこには彼女の姿があったが・・・。これはホラーと言っていいでしょう。想像すると、そのグロテスクさに慄然としてしまいます。
 それにしても、「崩壊の前日」に登場する“由伊”、「人間じゃない」の“咲谷由伊”という女性は気になります。 
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Another 2001  ☆   角川書店 
 クラスの中に死者が紛れ込み災厄を起こすということが続く夜見北中学3年3組では、引き継がれてきた対策として今回も増えた死者の代わりにクラスの中で存在しない人物を決めることとしていた。それに立候補したのは比良塚想。更に対策委員の考えで万一を考え、今年はもう一人増やそうということになり、くじ引きで葉住結香が選ばれる。対策が功を奏したのか4月は犠牲者が出なかったが、結香が重圧に耐えきれず存在しない者を続けることを拒否してから、犠牲者が出始める。対策委員の赤沢泉美らは結香の代わりに、自分がなると言ってくれた入院中の牧瀬にお願いするが、彼女がなっても災厄は止まらず、次々とクラス関係者が犠牲になっていく・・・。
 主人公はシリーズのスピンオフともいえる「Another エピソードS」で重要な役を演じた少年・比良塚想。もちろん、高校3年生になった見崎鳴も登場します。
 2013年に「Another エピソードS」が刊行されましたが、そもそも前作は2009年に刊行されており、既に11年がたっているため、覚えているのは、夜見北中学3年3組の生徒の中に死者が紛れ込んで、そのことがクラスの関係者の死という災厄を起こして以来、3年3組では死者が紛れ込んで生徒が1人増えた分、誰か1人をクラスにいない者として取り扱うという対策が取られることになっていたという大枠だけです。登場人物も「Another エピソードS」にも登場する見崎鳴と今回は海外にいる榊原恒一しか覚えていませんでした。
 この作品、ホラーですが、クラスに紛れ込んだ死者は誰かという謎解きのおもしろさもあります。この点、前作の内容を詳細に覚えている人には、今回は最初からわかってしまうようです。僕自身はすっかり内容を忘れていたので、楽しむことができたのですが、それでも所々違和感を覚えるところがあって、かなり早い段階で誰が死者なのかは多くの人はわかってしまうと思います。ただ、死者が誰かが分かってからが今回はもうひとひねりがあります。
 「Another」も厚かったですが、今作はそれを超える800頁の大作です。京極夏彦作品と同様の弁当箱本です。ただ、読み易いし、読みだしたら先が気になってページを繰る手が止まらず、二日間で読了です。面白かったです。あとがきによると、あと一つ続編があるようなので、期待したいです。 
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