降霊会の夜に霊媒師によって宣言された遠隔殺人のとおりに、人が殺される。現場となった家は、家具が全て家の外に出され、犠牲者はレオナルド・ダ・ヴィンチ本を踏み台として首をくくっていた。そして、さらに霊媒師によって第二の遠隔殺人が行われる。果たして犯人は霊媒師なのか。本当に遠隔殺人は可能なのか。
名探偵の登場、ワトソン役による記述、最後に挿入される「読者への挑戦」、そして、登場人物を集めての名探偵による謎解きと、本格探偵小説の要素を全て詰め込んだ作品です。また、登場人物によりチャンドラーやロス・マクドナルドの作品について感想が述べられ(チャンドラーについては、「長いお別れ」より「さらば愛しき女よ」の方がずっとおもしろいと言っていますが、同感です。)、そのうえ、「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」が語られ、さらには彼らにより「探偵小説作法十三箇条」なるものが考え出されるなど本格推理小説ファンとしては興味深いですね。
それにしても、作者にはしてやられてしまいました。いろいろ伏線が張ってあり、どこか釈然としないところがあったのですが、明らかにできないまま解決編を迎えてしまいました。確かに注意深く読めば真相がわかったかもしれません。しかし、納得できないのは、第二の遠隔殺人です。あの方法で発見時の状況になるのでしょうか。また、読者に仕掛けた一番のトリックは、ご都合主義ではないかなと思ってしまうのですが・・・。
名探偵妹尾については、この作品が第1弾としてシリーズ化されるようです。 |