森江春策シリーズの1作です。
大富豪の手によって移築されることとなったグラン・ギニョール城。そこに集った高名な素人探偵ナイジェル・ソープほか十数人の男女は雷鳴の中で城主の転落死に遭遇する。そして現れた謎の中国人…。一方、森江春策は列車内での怪死事件に出会い、被害者が息を引き取る直前に「グラン・ギニョール城の謎を解いて…」と言うのを聞く。
作者のあとがきによると、この作品は英米の本格ミステリの古典への感謝とオマージュを込めて着想されたものだそうです。中・高校生時代は夢中になって読んだ海外の本格ミステリですが、最近はどうも苦手になってしまいました。何と言っても登場人物のカタカナ名を覚えるのがひと苦労です。いちいち、この人誰だっけと前のページに戻って確認しなければなりません(このあたり、歳を感じさせます(^^;)。
それに時代がかった古城とかのいかにもという雰囲気がどうも苦手になってしまったようです。「2003年版このミステリーがすごい!」の第9位にランクされ、今回文庫化されなかったならば、たぶん手に取らなかったかもしれません。
やはり読み始めは古城に集まる10数人の外国人という設定に読むのが辛かったのですが、それと交互に語られる森江春策を主人公とする現在の部分は読みやすく引き込まれました。この作品はこの本格ミステリそのままの設定の部分と、森江春策が活躍する現在の部分がどうリンクしていくのかが最大の見所なのですが、「あ~、そうきたか!」と予想しない展開に拍手。ただ、事件の謎解きは強引すぎる気がしないでもないですね。
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