あさのあつこさんの作品を読むのは初めてです。しかし、今売れに売れている(子供も夢中で読んでいます)「バッテリー」のような少年たちの青春ストーリーというような趣の作品とは異なります。
小さな地方都市で起きた9人が死んだアパート全焼の火事。現場を訪ねてきた元新聞記者の桜庭。そこに現れた二人の少年。桜庭は焼死した一人の少女を知っているようだが何故なのか。二人の少年は何者なのか。物語はミステリータッチで始まります。
桜庭と二人の少年、永見明帆と柏木陽との出会いのプロローグから、物語は時を遡り、焼死した少女藍子と二人の少年との物語が語られていきます。そしてその中で描かれる藍子の不可解な行動と事件の背後に見え隠れする謎の男。
主人公の少年二人があまりにクールというか、他人を見下しているような感じに思えてしまって、僕だったらあまり友人にはしたくないタイプです。やはり彼らとの年の差が理解するのを妨げているのでしょうか。
ストーリーとしては、交際していながら藍子のことを何も知ろうとしなかったと非難される明帆が、何故藍子と交際を始めたのかという点がはっきり描かれていないのは不満です。また、藍子の不可解な行動のきっかけ等“なぜ”と疑問に思う部分(ネタ晴れになるので詳細は言えませんが)がラストに至るまで語られておらず、そのことがこの話に現実感を与えていない気がします。全てが絵空事みたいな感じです。導入部にはとても惹かれたのですが、残念です。
「本当に書きたかった作品です」と帯に書かれたあさのあつこさんの言葉に惹かれて購入したのですが、そうだとすると、今まで書いてきたものって何?と思ってしまうのは僕だけではないでしょうね。 |