本屋さんでタイトルとその表紙絵に惹かれて手に取りました。初めて読んだ朝倉かすみさんの本です。これは拾いものの(そう言うと作者の朝倉さんに失礼ですが)、1冊でした。
小学校のクラス会の三次会でバーに集まった5人の男女。彼らは、雪で来るのが遅れている田村という同級生が来るのを待っています。その間、彼らの脳裏に浮かぶのは今までの人生で彼らの心に深い印象を残した人たちのこと。田村の思い出話をきっかけに彼ら5人のエピソードが描かれていきます。
40歳にもなれば、そろそろ人生を振り返りたくなる頃です。彼らは田村に何を見ていたのでしょうか。“田村”というのはみんなが失いたくないものの象徴なんでしょうか。
みんなに「田村はまだか」なんて言ってもらえる田村という男は幸せですね。風貌からすればイジメの対象となってしまいそうなのに、そうはならない。小学生にしては格好良すぎるエピソードが始めの「田村はまだか」で語られますが、こんなにも皆から待ち望まれている田村がなかなか来ない。果たして田村はやってくるのか。それは読んでのお楽しみです。
彼らが思いを馳せる人物たちのエピソードも読ませます。そんな人物たちが繋がりがあるというのもおもしろいところです。
ときに挿入される“田村はまだか”ということばが不思議なリズム感をもってこの小説を読ませます。思わず読み終えた後に“田村はまだか”と呟いてしまいたくなります。これは題名の勝利ですね。 |