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荒木あかねの本棚

  1. 此の世の果ての殺人
  2. ちぎれた鎖と光の切れ端

此の世の果ての殺人  講談社 
 第68回(令和4年)江戸川乱歩賞受賞作品です。
 2か月後に小惑星「テロス」が地球に、それも日本の阿蘇に衝突し、地球が滅亡するとされる状況下において、日本から、ましてや衝突地点である九州から日本人が脱出する中で、福岡県太宰府市に住む小春は避難をせずにある目的のため自動車教習所に通っていた。そんな小春を指導するのは、なぜか教習所に一人残っていた元警察官であった教官・イサガワ。この日も教習を始めようとしたところ、異臭に気づいた小春が教習車のトランクを開けると、そこに女性の殺害死体があるのを発見する。二人は太宰府警察署に届け出に行くが、そこで二人は他でも連続して2件の殺人事件が起きていることを聞く。警察の機能が既に停止状態となっている中で、イサガワは自分が犯人を逮捕すると犯人探しを始めるが、なぜか小春もそれに付き合うことに・・・。
 小惑星が衝突して地球が滅亡する運命の中で殺人事件を捜査するという同じ設定の作品として、ベン・H・ウィンタースの「地上最後の刑事」三部作がありました。あちらは主人公は刑事でしたが、こちらは元刑事と23歳の女性二人。地球滅亡の状況下でどうしてそこまでして犯人探しをするのか。そこに説得力があるのかどうかに作品の面白さがあると思いますが、この作品では正義に執着しているというイサガワのキャラがそこに説得力を持たせます。そして小春としても、ネタバレになるので伏せますが、そこにはある理由が。
 こういう作品を読むといつも考えます。自分だったらこの状況下で何をするのだろうと。未来がないのに自動車教習をするというのは、ある意味、小春とイサガワは凄い。  
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ちぎれた鎖と光の切れ端 講談社 
 有明海にある離島・徒島のコテージに1週間の予定で泊りに来た樋藤、伊志田、浦井、加蘭、竹内、大石、橋本の7人とコテージの管理人・九条。楽しい気分でいる仲間の中で樋藤だけは違っていた。彼は6人によって人生を壊された高校の先輩・紀田の復讐のために6人に近づいて友人関係を作り、復讐の機会を狙っており、今回、徒島に遊びに行く機会を利用して6人を殺害しようと毒薬を持ち込んでいた。しかし、彼が手を下す前に、島に着いた夜に橋本が密室となったコテージの中で殺害され、舌を切り取られた死体で発見される。更に、翌日、今度は橋本の死体の第一発見者である大石がコテージの部屋で殺害され、舌を切り取られた死体で発見される。舌の切り取りは紀田の事件にも関わるものだった・・・。
 携帯は繋がらず、唯一本土との間を繋ぐ電話線が切断され、島の周りは海流が早く泳いで渡ることができない、船は1週間後でないと来ないという、いわゆるクローズドサークルの中での殺人という本格ミステリ好きにはたまらない設定です。一応1部である完結は見るのですが、更に、第1部の事件の3年後を描く2部では、1部の事件をなぞるような殺害死体の発見者が殺害されるという連続殺人事件が大阪で起きるという贅沢な体裁となっています。2部では、第三の殺人事件の発見者である横島真理愛が視点人物となりますが、なぜ彼女が発見者になったのかが読みどころです。
 1部の視点人物である樋藤ですが、先輩の復讐ということで殺人を決意しますが、物語の中では復讐のために殺人を犯すほどの紀田との関係が描かれているとはいえず、どうしてそこまでと思いながら読んでいました。2部で登場する恋人という関係ならまだわかりますが。
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