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青羽悠の本棚

  1. 星に願いを、そして手を。

星に願いを、そして手を。  集英社 
  第29回小説すばる新人賞を受賞した作品です。作者の青羽悠さんは16歳の高校生。16歳での受賞は同賞の最年少記録だそうです。
 祐人、春樹、理奈、薫の4人は宇宙を愛する高校2年生。放課後は市立の科学館に集まって勉強をしたり、プラネタリウムを見たりしている。科学館の館長とその奥さんの乃々さんはそんな4人を温かい目で見守っていた・・・。
 冒頭の高校生4人の青春ストーリーから一転、彼らが20代半ばになって、館長の突然の死に際し、彼ら4人が葬儀に集まります。そこから、科学館の閉館に当たって図書資料の整理を頼まれた4人が、館長が残した、計算式が修正されているノートを巡って、高校卒業以来途絶えていた交流を再開します。
 夢を持ち続けた者、現実を見て夢を捨てた者、そしてお互いの進む方向の違いで疎遠になってしまった4人の新たなストーリーの始まりを描いて行くのですが、16歳の高校生が20代の男女の気持ちだけではなく、60歳を過ぎた者たちの気持ちまで書き切るとは凄いです。自分自身と同じ高校生のことなら“今”を書けばいいのですが、長い人生の中で挫折を味わった者まで描いているのですから、その想像力はたいしたものです。
 ストーリーは若者たちの青春時代の後悔や恋、更には館長のノートから浮かび上がってくる、長い人生を生きてきた男たちの挫折からの先の話もちょっとミステリ風な味付けがされていて、飽きることなく読むことができました。
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