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安東能明の本棚

  1. 撃てない警官

撃てない警官 新潮文庫
(ちょっとネタバレ)
 初めて読んだ安東作品です。上昇志向の強い警察官、柴崎が主人公の7編が収録された連作短編集です。中の「随監」は、日本推理作家協会賞を受賞しています。
 冒頭の表題作「撃てない警官」は、柴崎が部下の自殺の責任を1人でかぶらされ、所轄に飛ばされるまでを描きます。この1話の部下の自殺を巡る真相は、思わぬ様相を呈し、ラストでは彼の人となりがわかる非常におもしろい導入部となっています。
 この柴崎という男、所轄に飛ばされ、普通だったら腐るところを、絶対にまた出世街道に復帰しようと思うところが凄いです。ただ、異動してからの事件の解決も、これを何とかしないと自分の出世に響くという気持ちを原動力にしているので、読んでいても共感できません(現実は彼の姿が人間らしいといえるのでしょうけど。)。今野敏さんの「隠蔽捜査」シリーズの主人公竜崎も鼻持ちならない男ですが、彼の方が毅然としていてかっこいいです。終わり方からして、続編があってもいいと思うのですが、シリーズ化されていないのは、主人公に人気がないせいでしょうか。
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