第15回ホラー小説大賞長編賞を受賞した「粘膜人間」に続く飴村さんのデビュー第2作です。こんな題名の本が「このミス」では第6位、「ミステリーが読みたい!」では第9位と、昨年のミステリベスト10を賑わせました。ベスト10に選ばれなければ、絶対読むことのない、というより手に取ることさえない作品だったでしょう。
舞台は戦前、そこは人間のほかにヘルビノと呼ばれる爬虫人間が存在し、金持ちの下男・下女として暮らしている日本です。蜥蜴の顔をした人間がいる世界ということから、話はいったいどこへ進んでいくのかと思ったら、やりたい放題の地方の名士のお坊ちゃんが犯したある事件を描く第1章から第2章では爬虫人間が住む国ナムールでの冒険活劇物語へと急展開します。第2章では、密林の中で飴村さん創造のグロテスクな生物が登場し、ホラー小説大賞の面目躍如と言うべき描写が続きます。この第2章の冒険活劇は、これだけで十分おもしろいのですが、第1章と第3章のために存在しているのがラスト近くになってわかります。
ホラーというよリスプラッターシーンが多い作品ですが、ラストで明らかなとおり親子愛の物語でもあります。おすすめですが、ちょっと女性読者は引いてしまうかも。 |