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飴村行の本棚

  1. 粘膜蜥蜴
  2. 爛れた闇の帝国

粘膜蜥蜴 角川ホラー文庫
 第15回ホラー小説大賞長編賞を受賞した「粘膜人間」に続く飴村さんのデビュー第2作です。こんな題名の本が「このミス」では第6位、「ミステリーが読みたい!」では第9位と、昨年のミステリベスト10を賑わせました。ベスト10に選ばれなければ、絶対読むことのない、というより手に取ることさえない作品だったでしょう。
 舞台は戦前、そこは人間のほかにヘルビノと呼ばれる爬虫人間が存在し、金持ちの下男・下女として暮らしている日本です。蜥蜴の顔をした人間がいる世界ということから、話はいったいどこへ進んでいくのかと思ったら、やりたい放題の地方の名士のお坊ちゃんが犯したある事件を描く第1章から第2章では爬虫人間が住む国ナムールでの冒険活劇物語へと急展開します。第2章では、密林の中で飴村さん創造のグロテスクな生物が登場し、ホラー小説大賞の面目躍如と言うべき描写が続きます。この第2章の冒険活劇は、これだけで十分おもしろいのですが、第1章と第3章のために存在しているのがラスト近くになってわかります。
 ホラーというよリスプラッターシーンが多い作品ですが、ラストで明らかなとおり親子愛の物語でもあります。おすすめですが、ちょっと女性読者は引いてしまうかも。
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爛れた闇の帝国 角川書店
 ヘルビノと呼ばれる爬虫人間が存在するという独特の世界を描いた「粘膜蜥蜴」が評判に違わずおもしろかったので、期待をして読んだのですが、これは読む人を選ぶ作品だというのが正直な感想です。
 物語は「闇に囚われし者」という章と「闇に怯えし者」という章が交互に進行していきます。
 「闇に囚われし者」は、独房に監禁された兵士が主人公の話です。本人は記憶をなくしており、時々憲兵がやってきては、彼に拷間を加え、そのたびに少しずつ記憶を取り戻していきます。とにかく、憲兵による拷間が凄いです。足を切り落としたり、指を切り落としたり、スプラッター映画のようで、ちょっと読むのが辛いです。
 一方「闇に怯えし者」は、高校生が主人公の話です。母と子の2人暮らしの正矢は、生きる気力を失い、退学届けを提出します。そんな正矢を心配する幼馴染みの晃一と絵美子。このままなら青春物語と思いたいところですが、なんと、正矢の先輩で不良の崎山が母と恋人同士というとんでもない話になります。息子のことはかまわずに23歳も離れた若い男に夢中になる母親を見なければならないなんて、正矢でなくても勘弁してもらいたいと思いますよね。こちらもまた読むのが辛い話です。
 この二つの話が一つへと繋がったときに、驚きの展開へとなっていきます。このあたりはミステリらしい謎解きの風味もあって、おもしろさも感じるのですが、なにせ読後感が悪すぎます。最初から最後まで暗く重苦しい雰囲気にこちらの気分もどっと落ち込みました。仕事で疲れているときに読む本ではありません。
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