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天祢涼の本棚

  1. 葬式組曲

葬式組曲 原書房
 葬式という儀式をせずに、亡くなったらすぐに火葬にして埋葬する「直葬」という形が当たり前になった時代。いまだに葬式の形が残るS県の葬儀会社の女性社長・紫苑ほか3人の社員が葬儀に当たって直面する謎を解き明かしていく5編からなる連作短編集です。
 5編は、父親と喧嘩し家を出ていた次男に喪主をさせるようにとの父親の遺言の裏に込められた父の思いを描く「父の葬式」、祖母の火葬を拒んだり、棺を自分の信仰する怪しげな宗教のものにしたいという孫娘の行動の裏にあるものを描く「祖母の葬式」、霊安室にあった死者の遺体が忽然と消えてしまった謎を描<「息子の葬式」、首つり自殺した妻の声が今でも聞こえる謎を描く「妻の葬式」と、ここまで葬式の裏に隠された様々な謎解きが描かれてきましたが、最後に置かれた「葬儀屋の葬式」で驚きの事実が明らかになります。
 冒頭のある人物の死に始まり、真実が二転三転し、これ以前の4話のいい雰囲気のラストをすべてひっくり返してしまうようなストーリーに、ただ唖然・呆然です。よくよく読めば、それぞれの話の中に埋め込まれた伏線が、最終5話できっちりと回収されているのがわかります。4話目まで読んだときは、葬式ミステリとも言うべきシリーズになるのかなあと思ったのですが、これでは無理でしょうね。おススメです。
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