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秋吉理香子の本棚

  1. 暗黒女子
  2. 放課後に死者は戻る
  3. 聖母
  4. 自殺予定日
  5. 絶対正義
  6. サイレンス
  7. 婚活中毒
  8. 鏡じかけの夢
  9. ガラスの殺意
  10. 灼熱
  11. 眠れる美女

暗黒女子 双葉社
 初めて読んだ秋吉理香子さんの作品です。
 ミッション系の女子校の文学サークルで行われる闇鍋の会(ミッション系の女子校で闇鍋とはなんてミスマッチな設定でしょうか。)。その席で、経営者の娘であり、サークルの中心人物であった白石いつみがテラスから転落死した事件の真相をサークル員がそれぞれ小説にして語ります。
 彼女らが告発する犯人はそれぞれサークル内の人物。家は貧しいが奨学生として入学した二谷美礼、老舗の料亭の娘であり洋菓子作りが好きな小南あかね、ブルガリアからの留学生であるディアナ・デチェヴァ、亡くなった父親の後を継いで医者を目指す古賀園子、高校生ながら書いた小説が賞を受賞した高岡志夜、そしてサークルの会長で闇鍋の主催者であり、いつみの親友である澄川小百合の6人の中、いったい真犯人は誰か。いつみが死んだときに手に持っていた“りんどう”は何を指し示すのか。なぜ、それぞれの語る物語に矛盾が生じているのか。いったい誰の言うことが本当で誰の言うことが嘘なのか。それぞれの語る物語からは論理的に犯人の姿を浮かび上がらせることはできません。しかし、犯人を指摘する彼女らの意図するものを知ったときはびっくりです。そして、ラストで読者に明らかにされた事実には、若い子って怖いなあと思ってしまいます。
 闇鍋というのがくせ者で、あんな形でこの闇鍋が話の展開に関わってくるとは、まったく思いもよりませんでした。この作品がいわゆる「イヤミス」に属するのがわかります。読後感悪いです。
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放課後に死者は戻る  ☆  双葉社 
 机の中に入っていたメモで崖に呼び出された小山のぶおは、何者かによって崖下に突き落とされる。気がついたとき、のぶおは彼を助けようとして崖から落ちた高橋真治となって病院のベッドに寝ていた。彼は高橋真治として、のぶおの学校に転校し、自分を殺そうとした犯人捜しを始める。
 冴えない男でクラスの中で存在感のまったくなかったのぶおが、ハーフでイケメンの高橋真治になったことからモテ男になって戸惑いながら犯人を捜します。担任教師、クラスメート、母親、そして一番親しかった友人と疑わしい事実がどんどん出てきます。いったい犯人は誰なのか。作者の秋吉さんの仕掛けた罠にものの見事に引っかかってしまいました。
 ミステリーであり、ファンタジーでもありますが、今までの自分を見つめ直すラストは青春小説そのものです。前作の「暗黒女子」と違って、ちょっと切ないですが、心地よい読了感を与えてくれます。 
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聖母  ☆  双葉社 
(ちょっとネタバレ)
 苦しい不妊治療を経て40歳を過ぎてようやく娘を授かった保奈美は近所で幼児陵辱殺人事件が起きたことを知り、自分の娘は守り抜くと誓う。一方、高校生の真琴は剣道部員で仲間からも頼られ、ボランティアで地域の子どもたちに剣道を教えているが、実は事件の犯人であることが前半で明らかにされる。
 物語は、次の幼児の殺害を狙う真琴の行動と、犯人から娘を守ろうとする保奈美の行動、事件の捜査に携わる坂口と谷崎の刑事コンビの行動を交互に描いていきます。いったいこの三組がどこで交錯してくるのか。更には真琴が殺した幼児の死体に損傷を加えているのは誰なのかという謎が加わり、事件は複雑化していきます。
 幼児の性器を切り取るというだけでイヤミス感たっぷりなのに、保奈美の異常さに引いてしまいます。子どもを大切に思う保奈美の気持ちはわかりますが、事件を知って彼女がとる行動はあまりに異常と言わざるを得ません。題名の「聖母」が意味するところが、この異常なまでの行動をとる保奈美を言い表しているのかと思ったのですが、それだけの単純な意味ではありませんでした。
 帯に「ラスト20ページ、世界は一変する。」と、ラストの驚きの展開が謳われていたので、冒頭から騙されまいと気をつけながら読み進みましたが、やられましたねえ。作者が読者をミスリードしていると思われる部分はここだなとわかる部分もあったのですが、それ以上の事実が隠されていました。この感想を書くためにもう一度内容を確認していて、「えっ!そうだったのか!」と改めて騙されていることにわかったところも。3つの視点が変わるので時系列がズレているのではと思ったのですが・・・。
 ラスト、ちょっと気になる終わり方でしたね。 
 
自殺予定日  東京創元社 
 瑠璃はフードプロデューサーの父と母と幸せな日々を過ごしていたが、自分たちの理想の店を開店した矢先、母が急死してしまう。 しばらくして父はアシスタントとして雇ったれい子と結婚をするが、2年も経たないうちに心筋梗塞で死んでしまう。父の死後も生き生きと働くれい子を見て、父がれい子によって殺されたのではないかと疑った瑠璃は警察に行ったが相手にされず、自殺することでれい子を告発しようと自殺の名所の村に向かう。夜になって宿を出た瑠璃は、首つり自殺をしようとしたが枝が折れて失敗し、そこで裕章という少年に出会う。裕章に説得され、自殺を思い止まった瑠璃は、1週間後を再度の自殺予定日とし、その間にれい子が父を殺した証拠を掴もうと考えるが、なぜか裕章の存在を周囲の人がまったく無視していることに気づく・・・。
 娘が父親の死後に、ビジネスを引き継いで世間に注目されるようになった継母に嫌悪感を抱くのはよくあるパターンというか、心情的に仕方がないことですね。そこから、継母が父を殺しだのではないかと、証拠を掴もうと奔走する瑠璃を描くのがミステリとしての本作品の中心となるストーリーですが、それ以外に、学校での人間関係がうまくいかない瑠璃の姿を描いたり、裕章への気持ちが次第に変化してくる様子を描いたりして、彼女の成長物語としての面も併せ持った作品といえます。
 そして、何と言ってもある事実が明らかになるラストでのどんでん返しにはやられました。きっと最後は感動のシーンがあるのだろうなあと予想していたら、見事に裏切られました。感涙のラストではなく、爽やかなラストでした。 
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絶対正義  幻冬舎 
 読書中もラストを迎えても嫌な気分にさせてくれる作品です。実社会で、絶対にこんな人には関わりたくないなあと思いながら読了です。
 5年前に殺した同級生の女性の名前で、加害者である4人の女性の元にパーティーヘの招待状が届く。いったい誰が招待状を送ったのか。殺したはずなのに生きていたのか。それとも4人の中に送り主がいるのか。物語は加害者の4人の女性が、初めは被害者が自分たちに対してとってくれた行動に感謝しながら、次第に被害者への殺意を抱いていき、ついには犯行に至る様子が語られていきます。そして、ラストのパーティー会場で驚きの結果が待ち受けるという構成になっています。
 被害者の高槻範子という女性ですが、確かに「こんな女性は友人に持ちたくない!」と言いたくなる女性です。彼女の言うことは正しくて間違ってはいない、だから理詰めでこられると反論はできないけど、でもそこまで言わなくてもと誰もが思うのではないでしょうか。罰するほどではないでしょうと言いたくなることも容赦をしない彼女がこの社会で平気で生きていくことができるのかと思います。タバコを吸った生徒のことを考えて対応した先生が範子の告発で処分されたのはあまりにかわいそう。誰もおかしいと彼女に言えないのでしょうか。
 最初は4人とも範子に助けられて感謝をするのですが、彼女に心を許したとたん、思わぬしっぺ返しを食うのです。高校時代の範子の行動を見ていたのに、彼女の性格を理解できなかった4人も4人です。
 範子は友だちのために何かをなすのではなく、“正義”を行うことに喜びを感じているだけということに4人は気づきます。“正義”を行うためなら、誰が不幸になろうと問題ではないと考えるのです。4人がそれぞれ言っている“正義のサイボーグ”“正義のモンスター”“正義のヌーディスト”“正義の夜叉”というのは言い得て妙です。 
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サイレンス  文藝春秋 
 新潟の人口300人足らずの離れ小島・雪之島で生まれた深雪は、アイドルに憧れ、中学生の頃オーディションを受けて最終審査まで残りながら両親の反対で断念。その後東京に出て芸能界入りを目指すが果たせず、今では芸能事務所でアイドルのマネージャーをしていた。34歳となり、交際をしていた広告代理店の藤崎俊亜貴にようやく結婚を承諾させ、父母に挨拶するために雪之島を訪れるが・・・。
 現在の話ですが、舞台となるのは昔ながらの“家”制度が残る島です。本家だとか分家だとか、それに加えて、島の守り神“しまたまさん”だとか、これではまるで横溝正史の世界ではないかと思いながら読み進みました。
 イヤミスの旗手といわれる秋吉さんの作品ですから、明るい終わり方ではないと読む前から予想していましたが、ミステリーとしてのストーリー展開がどうなるのかは途中で伏線もわかってしまい、結末は想像ができてしまいました。ありふれたパターンの話です。
 ミステリーとしての謎解きよりは、どうしようもない男と離れることのできない深雪に対し、同性の読者は腹を立てる人も多いのでは。 
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婚活中毒  実業之日本社 
 “婚活”をテーマにした4編が収録された短編集です。ただ、イヤミスの秋吉さんですから、ストレートに“婚活”を取り上げた作品であるはずがありません。アラフォーの女性、女性との交際経験の少ない男性、いわゆる“リケジョ”の女性、子どもの結婚相手を探す親たちを主人公にして“婚活”の顛末が描かれます。
 恋人から一方的な別れを告げられた沙織は、過疎化の進むニュータウンにある結婚相談所に入会する。紹介された杉下は容姿も仕事も収人も申し分のない男性で、沙織はいっぺんで気に入り、杉下も沙織を気に入ってくれた様子で交際が始まるが、沙織はなぜ杉下が今まで独りだったのか疑問に感じる。杉下に聞くと今まで3人の女性を紹介され、つきあったが縁がなかったというが、実は・・・(「理想の男])。さすがイヤミスといえば秋吉さんらしいどんでん返しのラストでした。
 30歳で独身の友人が自宅マンションで倒れたまま、半年以上も気づかれなかったことを聞いた圭介は、他人事と思えず早く家庭を持ちたいと切実に思うようになる。ある日、街コンのバーベキューパーティーに参加した圭介は、同じテーブルで美人の愛奈とめでたくカップルとなり、交際を始めたが、ブランド品をねだるなど要求が次第にエスカレートしてくる彼女との交際に限界を感じるようになる・・・(「婚活マニュアル」)。女性の手練手管は凄いなあ、男性諸君心してかかりなさいと読みながら思ってしまった作品です。
 嫁不足に悩む田舎の男性とのお見合いというテレビの婚活番組に出演した理系女子の恵美。目当ての男性とのカップル誕生を目指し、リケジョらしくデータを分析してお見合いに臨むが・・・(「リケジョの婚活」)。数字を計算するようには男女の繋がりはうまくいかないという話ですが、それで終わらず、秋吉さんは更にもう一歩その先まで描きます。リケジョって、そこまで計算しますかねえ。
 忙しくて時間の取れない子供の代わりに親が婚活をする会場で知り合った吉村夫婦との間で子供同士の見合いをすることになった益男と郁子の夫婦。見合いはしたものの息子は結婚する気がなく、断ってくれと言ったが、相手の母親に一目惚れした益男は、相手からいい返事があったのをいいことに、母親会いたさにまた会う機会を勝手に作ってしまう・・・(「代理婚活」)。理性が戒めても恋に浮かれてしまった男の話です。いくつになっても恋はしたいものですが、だいたいそういうのって、痛い目に遭うものですよねえ。男性陣には耳が痛い話ですが、ラストは秋吉さんらしからぬちょっといい話で締めくくります。 
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鏡じかけの夢  新潮社 
 鏡を磨くと願ったことを叶えられるという言い伝えのある1枚の大きな鏡を巡る連作短編集です。
 もちろん秋吉作品ですから、単純に鏡を磨いて望みが叶えられてハッピーエンドになるという話ではありません。せっせと鏡を磨いても得られるものはあまりに悲しい事実です。
 精神科病院に入院している裕福な家の奥様を担当する看護師は妻の見舞いに来る心優しいその夫を愛してしまい、やがてある行動に出てしまう・・・(「泣きぼくろの鏡」)。
 良家の老婆からある鏡の研ぎを依頼された鏡研ぎ職人の源次郎は、彼が作業をしているときに見学をしていた青年・龍吾に心惹かれる。やがて源次郎は嫉妬からあることをしてしまう・・・(「ナルキッソスの鏡」)。
 関東大震災の火事で全身にやけどを負い、話すこともできず、耳も聞こえなくなった榊は、その際、命を懸けて救助した斯界の大立者が亡くなったとき、その跡目を継ぐ。ある日、榊はふと入場した劇場で踊る少女たちの中にいた美津子に心奪われ、彼女のために、何度も裏切られながらも助力を惜しまなかったが・・・(「繚乱の鏡」)。
 傷痍軍人の栄作は昔少し囓った奇術で街角で小銭稼ぎをしていたが、ある日、高額な礼金の付いた鏡の在りかを知っているという浮浪児に出会う。少年の案内で鏡を見つけた栄作だったが、少年が奇術の才能を持っていると気づき、彼を一流の奇術師に鍛え、彼に稼がそうと考える・・・(「奇術師の鏡」)。
 戦争で故郷を追われ、ヴェネツィアにやって来た双子の姉妹は、サーカス団の団長から誘われ、サーカスの舞台に立ち双子であることを利用した出し物に出演することとなるが・・・(「双生児の鏡」)
 印象的だったのは最後の二編。「奇術師の鏡」での傷痍軍人の栄作は自分の欲で浮浪児を鍛え始めましたが、最後には自分の子どものように彼を檜舞台に立たせようとしたのであって、あまりに悲しいラストです。また、「双生児の鏡」では姉が冷たい態度をとったのには、妹への愛があったためだと明かされるラストは悲劇としか言いようがありません。この作品に「奇術師の鏡」の浮浪児が出てきたことだけが救いでした。

※「ナルキッソスの鏡」に登場するカラヴァッジョの「ナルキッソス」は2年前に国立西洋美術館で開催していた展覧会で見ました。 
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ガラスの殺意  双葉社 
 警察に人を殺したとの電話がかかってくる。通報したのはその家の主婦・柏原麻由子。彼女は20年前に起きた通り魔事件で両親を殺されたうえ、彼女自身も犯人から逃れるために道路に飛び出して車にはねられ、「高次脳機能障害」を負っていた。そのため、直前に起きたこともすぐ忘れてしまう状況にあり、自分が殺人を犯し、警察に通報したことも覚えていなかった。被害者は仮釈放となって刑務所から出てきていた20年前の通り魔事件の加害者であったため、彼女が復讐したのではないかと警察は考えるが・・・。
 果たして、麻由子は犯人なのか。直前に起こったこともすぐ忘れてしまうという「高次脳機能障害」を負った女性が、犯人への憎しみを覚えておくことができるのかという疑問がすぐ思い浮かびますが、その点は夫の証言により覚えていることへの彼女の執念が語られます。しかし、そこは秋吉さんですから、単純に高次脳機能障害者による殺人を描いたものではありません。物語は二転、三転し、思わぬ事実が明らかになっていきます。ラストは、「これって秋吉さんの作品?」と思ってしまうほど、イヤミスの秋吉さんらしからぬ感動で終わります。
 物語は、記憶を保てない中で自分の立場に戸惑う麻由子とともに、事件を捜査する刑事・桐谷優子が描かれます。優子は、認知症の母親を抱え、刑事という職業もあって、十分介護ができず、施設に預けています。高次脳機能障害と認知症という違いはありますが、記憶をなくしてしまうということは母と同じ麻由子を献身的に介護する夫の光治の姿を自分に重ね合わせて、自己嫌悪に陥ります。この作品は、もちろんミステリーとしての謎解きが主ですが、今の時代が抱える介護問題についても大きくページを割いて描いています。
 麻由子を罪に問えるかという点は、彼女は人を殺害することは犯罪だと認識しており、ただ、自分が実行したことを覚えていないだけのことなので、彼女のような病状の場合は責任能力があるのではないでしょうか。 
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灼熱  PHP研究所 
 咲花子は定時制高校で知り合った忠時と結婚し、幸せな生活を送っていた。しかし、ある日、忠時は咲花子が知らずに契約していたマンションから転落して死んでしまう。訪れた刑事により、忠時がリストラに遭って会社を辞め、投資詐欺に手を染めていたことを知らされる。やがて、目撃者であった久保河内英雄が投資詐欺の被害者であることが判明し、逮捕されるが、証拠不十分で釈放される。咲花子は絶望し、自殺サイトで知り合った佐藤絵里と自殺を図るが、1人助かってしまう。咲花子は絵里として身分を偽って、整形もし、英雄に近づき、復讐をしようとする。やがて、英雄と結婚をし、幸せそうな顔を見せながら、事件の証拠を掴もうとするが・・・。
 自殺を図って偶然にも生き残ったので、死んだ人に成り代わったり、英雄に好意があると迫って結婚に持ち込んだりと、何だか設定があまりに強引すぎます。普通、そんな女性には「これは近づいてはまずい女だ」と思って、相手にしないではないでしょうかねえ。あまりに都合がよすぎで、最初から物語の中にのめり込むことができませんでした。
 また、結婚生活を送っていくうちに、英雄の誠実さに、もしかしたら彼は犯人ではないのかと気持ちが揺れて、しだいに英雄を好きになっていくというのもよくあるパターンで、残念ながら面白みがありません。
 更に、事件の真相に咲花子に関わるある出来事が関係していたなんていうのも、こんな偶然ありえないでしょうと言いたくなります。最後のシーン、なぜあの人は自分が犯したことも忘れたように、あんなに冷静でいられるのでしょうか。納得いきません。 
 
眠れる美女  小学館 
 クラシック・バレエの世界を舞台にしたミステリー「ジゼル」の続編です。
 「ジゼル」で起きた事件後、東京グランド・バレエ団は東京スペリオール・バレエ団として再出発することとなる。その旗揚げ公演として「眠れる美女」が演目に決まり、“バレエ界の至宝”とされるシルヴィア・ミハイロワが演出することになるが、主役に決まった客演のユリカ・アサヒナは傲慢な態度で団の和をかき乱す。そんなとき、「眠れる美女」の登場人物である、悪の精“カラボス”を名乗る者から不気味な脅迫状が届き、やがて一人のプリマが殺害される事件が起きる・・・。
 「ジゼル」を未読なので詳細はわからないのですが、前作で事件が起き、それが解決したらまた新たな事件が起きるという、そんなにバレエ界はドロドロとした人間関係の世界なのかと、バレエを観たことのない者として、そんな印象を持ってしまいます。
 「ジゼル」を未読でも、この作品自体を楽しむのには支障はありませんが、ただ主人公の〇〇花音はじめ登場人物の多くは前作から引き続いていますので、こちらを先に読むと、ここに登場している人は「ジゼル」での犯人ではないことがわかってしまい、「ジゼル」を読む楽しさが失われるのではとも思います。
 バレエを知っている人には頭の中にその情景を思い浮かべながら読むという楽しみもあるかもしれませんが、バレエを知らない身としては、バレエの描写があっても何のことやらとしか思えないのは残念なところです。
 それに、ああいうことをした人が(ネタバレになるので詳細は言えませんが)あんな簡単には許されるとは思えません。ラストのハッピー・エンドには不満です。
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