キャプテンサンダーボルト ☆ | 文藝春秋 |
金に困っていた相葉時之は、友人に詐欺を働いた男を騙して金を巻き上げようとホテルに呼び出す。たまたまそのホテルのドアマンをしていた少年野球仲間だった田中に、男が来たら部屋番号を書いたメモを渡すよう頼んだが、田中が別に頼まれていた部屋番号が書かれたメモを間違って渡してしまったことから別の男が部屋に現れて話が合わず大騒動となり、相葉は男の携帯電話を奪って逃走する。一方相葉の少年野球仲間だったコピー機器の会社に勤める井ノ原は、一人息子の病気を治す費用を捻出するため、コピーから情報を取得して売るという不正を行っていた。追っ手の銀髪の男から逃走中の相葉と井ノ原が出会ったことから、巻き込まれた井ノ原共々二人の逃走劇が始まる。 子どもの頃から他人を騒動に巻き込む相葉と、わかっていながら相葉によって騒動に巻き込まれてしまう井ノ原の迷コンビが、どのようにターミネーターみたいな銀髪の男から逃げ回るのか。 ドキドキの逃走劇にこの先どうなるのだろうという期待感でページを繰る手が止まりません。伊坂さんの作品で言えば、「ゴールデンスランバー」のような訳もわからず事件の渦中に巻き込まれて逃げ回るといった話です。 公開直前に突然公開中止になった特撮ヒーローもの映画、致死率7割以上の村上レンサ球菌という伝染病の発生と伝染を防ぐための予防接種、太平洋戦争中に蔵王に墜落したというB29の話という荒唐無稽な話がやがて―つの話へと収斂していくところがこの作品のおもしろさでしょうか。伊坂作品同様、いろいろな場所に張り巡らされた伏線がラストに見事なまでに回収されます。 阿部さんと伊坂さんの合作ですが、明確にこの章は誰の担当と決めて交互に書いたわけでなく、それぞれ相手の書いた文章に手を入れながら書き上げていった作品のようです。阿部和重さんの作品は読んだことがないので、作風はまったくわからないのですが、この作品には伊坂作品の雰囲気はたっぷりです。伊坂ファンにはおすすめです。 |
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