石の都に眠れ 二見文庫ザ・ミステリコレクション (二見書房)加藤洋子訳
   ストーリー
ヒロインは若き考古学者のジリアン・シャーウッド。
ジリアンは変人とバカにされた考古学者の父が、生前発見していた
伝説の石の都を求めて、南米ブラジル・アマゾンの奥地へ調査の旅に
出ることになります。

同行するのは腹違いの兄リックと、スポンサーとはいえ怪しげな紳士の
ケイツ、ケイツが雇ったさらに凶暴そうな大男ドゥトラ。
女ばかりの部族が守った石の都には秘密の財宝があるとされ、
純粋に考古学者としての使命感を持つジリアンをよそに、それぞれの
思惑が交錯した旅になる、これがストーリー展開のミソ。

ヒーローであるベン・ルイスは、アメリカ人ですが根っからの冒険野郎で、
フリーランスのリバーガイドとして自由な生き方を選んだ男。
ひとクセもふたクセもありそうな一行と、ジリアンの父親への思いに
興味を覚えたベンは、危険を承知でガイドを引き受け、長い旅が
始まります。

冷たいほど知的な雰囲気のジリアンに、女性の扱いには自信をもっていた
ベンがなぜか翻弄され、熱くなりっぱなしなのが読んでいて楽しいところ。

苦難の末にその全貌を現す石の都、「女王の心臓」と名付けられた
巨大なダイヤモンドが引きおこす波乱と、ジリアンとベンのラブストーリーを
からめた、ハリウッドの娯楽映画のような趣の小説です。

   みどころ&感想
実はリンダ本をハーレクイン以外で初めて読んだのがこの作品だったので、
ハーレクインではあまり描かれないような暴力的な描写や、
殺人の場面に最初は「ひぇ〜〜」となった記憶があります。

もちろん、一般の小説として極端に過激なわけではないのですが、
ロマンス小説の純粋培養に知らないうちに慣れていたのでしょうね。

しかし信頼していた若いガイドが事故死する場面は、旅の困難さを読者に
感じさせる点で必要だったのでしょうし、映画「インディ・ジョーンズ」同様、
財宝を狙う悪人がいる以上は、血なまぐさい描写が出てくるのも
仕方のないことだと思います。


ストーリーそのものは冒険モノの定石通りなのですが、ベンとジリアンの
キャラクター設定が、このラブロマンスをより楽しくしている要因でしょう。

なんたってジリアンに対するベンの熱烈な求愛行動は、
なんというか、まるで野生の王国(笑)
とにかく、ジリアンのことが大好きで大好きで、ときには情けないお預けを
くらいながらも、冒険に関しては冷静さと勇気を発揮するその魅力は、
シンプルだけど最高ですわ〜☆

ベンには恋愛の駆け引きとかコンプレックスとか、難しい理屈は全然なし。


特に、滝で水浴びをするシーンは必読ですね。
「男ってのは、ホントにもう・・・」と、ジリアンと一緒にあきれ笑いする、
そういう楽しさを保証いたしマス♪


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リンダ・ハワード作品ピックアップ&あくまで私的な感想   Page 2

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  愛は命がけ シルエットラブストリーム&100LOVE (ハーレクイン)霜月桂訳
   ストーリー
リンダ本の中でも一番人気の高い、マッケンジーシリーズの1冊です。

ヒーローはマッケンジー家の四男、ゼイン・マッケンジー。 子供の頃から
身体能力が高く、戦士としての素質を身につけていたゼインは、
長じてアメリカ合衆国海軍・特殊部隊の指揮官になりました。

ゼインの今回の任務は、ギリシア駐在のアメリカ大使ウィリアム・ラブジョイの
溺愛する娘、ベアリーが誘拐されたことから始まります。

ゼインはチームを組んでリビアに向かい、無事に彼女を助け出すのですが、
ある事がきっかけで二人は離ればなれに。

しかしなぜ、ベアリーは狙われたのか?
大使である父、ウィリアム・ラブジョイの周辺には不穏な動きが絶えず、
祖国を裏切ったスパイ容疑がかかっているようです。

一時的には、ひき離されたベアリーとゼインが絆を深めつつ、
ラブジョイ大使の疑惑を解いていくというストーリーが楽しめる作品です。

   みどころ&感想

マッケンジー家の物語はどれも大好きですが、この「愛は命がけ」は特に
前半のベアリー救出劇がとっても良くできていると思います。
リンダ自身もこの場面を描きたくて作品を生み出したのではないかなあ。
そう思えるほど、救出までの描写と、ベアリーの心情の変化、
特にゼインの鋭い洞察力は、心憎いほど。


暗い部屋に監禁され、全裸で寝台にくくりつけられていたベアリーを
助け出して、思いやり深く守り続けるゼイン。
命をかけた非常事態の中、彼に恋してしまうベアリーの気持ちは
女性なら「納得!」ではないでしょうか。

顔も見えないほど、真っ暗闇の中だからこそ、ベアリーには見えた
ゼインの人間的な本質。
ベアリーが心の傷を癒すために、実行に及んだセクシーで大胆な
強行手段も必読ですね。(詳しくは、ネタバレのお部屋でこっそりと・・笑)


後半、二人がアメリカで再会してからの展開はゼインの行動にちょっと
理解しにくい面もありますが、この本のもう一つの魅力は、プロローグと
エピローグで、ゼインの両親をはじめとしたマッケンジー・ファミリーが
描かれていること。
微笑ましくも、うらやましくなるような愛情物語を楽しんで頂けると思います。


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  悲しみにさようなら 二見文庫 ザ・ミステリコレクション (二見書房)加藤洋子訳
   ストーリー
舞台はメキシコとの国境に近い、テキサス州エルパソ。
ヒロインは、夫である医師デイビッドと共に平和に暮らしていたのに突然、
愛する息子ジャスティンを奪われたミラ。

人身売買を手がける誘拐組織の一味を追い、赤ん坊をとり戻すためミラは
変わります。
妊娠中もペディキュアを欠かさないほどフェミニンな女性だったのに、身体を
鍛えて武器の扱いを覚え、夫とは離婚、行方不明者を探すボランティア組織
「ファインダース」の代表として駆け回る毎日。

ジャスティンの事件から10年が過ぎたある日、ミラの元にある情報が
もたらされます。
その細い糸を、這い回るようにたぐり寄せるミラに、プロも恐れる殺し屋だと
いう噂の男、ディアスが手を貸すことになります。


さて、ミラの赤ん坊は見つかるのか、その顛末の先にあるものは・・・。
ラブストーリーというより、ヒューマン・ドラマの趣が強い作品だと思います。
   みどころ&感想
これまでのリンダ作品とは一線を画する、かなり重いテーマ。
苦労つづきのヒロインが登場する作品は過去にもあったと思うのですが、
これほど長い期間、喪失と焦燥に痛めつけられて人生が激変したヒロインは
珍しいのではないでしょうか。
とにかく前半は、ミラの執念に圧倒されるようにストーリーが進んで
行く印象でしたね〜。

正直言ってこういうテーマだと、ラブロマンスとしての味わいは、少なくなるの
ではないかと思ったのですが、そこはさすがリンダ・ハワード。
ミラの息子捜索の物語と、ラブストーリーをちゃんと両立させています。


個人的に感じる、この作品の一番のみどころは、特殊な境遇の女性を
愛するようになるヒーローの性格づけのうまさ。
なんたって黒髪に黒い瞳の男、ディアスはセリフの少なさでは
歴代ヒーローの中でもナンバー1だと思います。
まさにキング・オブ・無口(笑)。

シャレたことも言わない、女性経験も極端に多くはない。だけどいったん
自分の精神的なテリトリーに入ることを許したら、こういうタイプの男性こそが
もっとも一途に女性を愛するのではないでしょうか。
文中にも出てきますが、まるで2匹の狼のように身を寄せ合い、互いだけを
求め、深く理解するミラとディアス。
そういう意味で、これまでのどの作品よりも「運命の相手」同志なんだなあと
思いました。


ラストの展開では、翻訳者さんの解説にもある通り、涙を拭くタオルと
ティッシュが必要になるのは間違いありません。 
どうぞ、心ゆくまで泣けるストーリーを味わっていただきたいと思います。


くれぐれも、良い子は「結末から読もう」なんて思われませぬよう(^^)。

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